領主の妻を救え!で、勤務地を振り分けました①
「おい、フェールとカイユーは二手に別れろ。」
アルバートルの命令だったが、フェールはそれに対して異を唱えた。
カイユーはアルバートルの言う事には何でも従い、裸踊りを命じられても踊りそうな奴だが、フェールは違う。
中肉中背で黒髪に黒い瞳の日本の高校男子のような童顔で可愛い奴だが、取りあえず成人しているどころか、カイユーよりも一つ年上なだけあって考え方が姑息な大人なのである。
そして、そんな大人なフェールは、年齢的にはアルバートル隊の一番下ではないはずなのに、一番年若いカイユーよりも扱いがむごいことが多い事も、ちゃんと知っているのだ。
アルバートルはカイユーに裸踊りなど命じない、そんなことを命じる時はフェールにこそ命じるのだ、という悲しい事実を。
これはカイユーの方がアルバートルの弟子になった方が早いという実際によるもので、実はカイユーこそフェールの兄弟子になるのである。
弟弟子が兄弟子よりも割を食うのは当たり前の話だ。
ちなみに、アルバートルは誰の裸踊りも見たくないどころか、自分こそ裸踊りをしてしまう男なので、フェールが今まで裸踊りを命じられた事は無い。
って、俺は何を言っているのか。
つまり、竜の卵を探しに行こう!冒険のメンバーはくじ引きによって選ばれたらしいのだが、メンバーのバランスを考えて二手に分けた時にフェールが思いっきり異を唱えた、という事だ。
「団長!カイユーは団長と一緒に決まっているじゃないですか!そしたら俺っちはお留守番決定じゃないですか!俺もシロちゃんとお出掛け冒険したいです!」
俺と領地に残る人間が罰ゲーム認識だったとは、ありがとうよフェール。
話しは戻すが、フェールのその陳情に対し、人のくせに悪竜な俺よりも人でなしな団長はしれっと言い放ったそうだ。
「だってお前、銃騎士じゃねえだろ。今回は戦闘になっても近接戦はしないからな。遠くから撃ち払うか交わすかだけだ。剣騎士は邪魔じゃねぇか!」
俺はフェールの陳情を聞きながら、嘘泣きをしているフェールを突いた。
「君さ、本気で冒険メンバーに加わる気は無かったよね。」
両手から顔を上げた男は、してやったりの笑顔を俺に見せた。
「当り前じゃあないですか。リリアナ姐さんは領地のおこちゃま達まで連れていくって言い張っていましたから。俺はガキのお守りは嫌ですもの。」
フェールとはこういう奴だ。




