君も伯父さんでしょう?
俺の呼び出しに絶対に応えなければいけない男は、呼び出しに応えてくれはしたが、嫌々という所を隠そうともしなかった。
領地の保安部隊の本拠地の会議室において、俺がその会議室に詰めており、ここにいなければいけない男の遊び先に連絡しているというシチェーションであるというのに、その雇われ人はどうしてそこまで嫌そうな顔が出来るのか。
石膏像で出来た神様の像に軽く色づけしたら動き出した、そんな素晴らしい外見をした男のくせに、中身はナマケモノ成分でぐずぐずに煮詰まっているからか。
「ねええ、アルバートル。君は心配じゃないの。」
「心配ですよ。だからこそ、ここで思い出さないように思いっきり破目を外しているんじゃないですか!俺の気持ちだって解って下さいよ!」
「なに破目を外しているかな!帰って来いよ!帰って来て、君が一番大事にしなきゃならんという、俺を慰めてよ!」
アルバートルはものすっごく嫌そうに顔を歪め、腐れ者を見るような目で俺を見返して来た。
君がいるコンスタンチーノの奪還も、整地に復興も、俺の魔力によるものじゃないのかと、百年ぐらい言い聞かせたいぐらいだ。
「畜生!どうして俺はお前に水上バイクなんて作ってやったんだ!」
「サイコーですよ。スキー板付けた奴を引っ張りまわすのもいいですね。はは、引っ張りまわされるのもサイコーですよ!」
「お前全然妹の心配してないじゃん!」
うわっと泣きながら(嘘泣きだけどさ)俺は顔を両手で覆った。
「ダグド様。シロちゃんが大丈夫って言っているのですから大丈夫ですわ。」
アルバートルが映っていたモニターに蜂蜜色の影が割り込んでいた。
水着姿の夏男であるアルバートルが見事すぎて目を開けていられないぐらいの眩しい裸体を晒しているのとおなじように、リリアナも黒ビキニで豊満な恵体の輝ける裸体を晒していた。
しかし人間の男でしかないアルバートルは輝いたままで、美女のリリアナの方が影にしかならないのは不思議だとぼんやりと思った。
口にしたらリリアナたちに俺が散々に扱き下ろされてしまうだろうが、どんな美女だろうとアルバートルの隣では普通の美女にしかならないのは本当に不思議だ。
おかしい。
リリアナこそ竜族で、アルバートルは俺の妻のエレノーラと同じく人間でしか無いのに。
いや、輝きすぎるアルバートル兄妹がおかしいのか。
「ダグド様?あなたこそ大丈夫と信じるべきでは無くて?」
リリアナの声は俺を慰める響きがあり、俺自身が大丈夫だとエレノーラに微笑みかける事に疲れていたことを思い出させた。
一番不安なのは彼女であり、そんな彼女は俺にいつも笑顔を向けている。
「あなた、心配なさらないで。大丈夫なんですから。」
俺の頬に涙が一粒零れた。
「ちょ、ダグド様。大丈夫ですから!」
アルバートルはなんだかんだ言っても俺を守ろうとしてくれている。
俺の涙に驚いたのか、彼はリリアナを押しのけてモニターの全面に自分だけを映し、俺の目を真っ直ぐに見つめた。
「大丈夫ですから心配しないでください。現在古代竜の卵を捜索中です。化石でも殻さえあれば大丈夫だとシロロ様が言ってますからね。なんですか、エレノーラのお腹の中身を竜の卵に移せれば双方が無事なんだそうですよ。」
俺は、領地をほっぽって何をアイテム探しの冒険に出ているんだとアルバートルを罵るべきか、それ程に妻の状況がひっ迫していた事に叫び出すべきか。




