復興されたコンスタンティーノの風景
俺達が再建したコンスタンティーノは、厳密に言わなくとも見た通りで、アルバートルの生まれ育った町の姿を殆ど失っている。
高い城壁で囲まれたそこは、外観的な見た目が要塞でしかない。
使えそうな市街の一部を城壁で囲んで再構築したらそうなったのだ。
遠目に見れば、伏せた象みたいな形をした要塞島を波止場のある鼻先を海方向にしてケツを陸地にぶち込んだ、という感じだろうか。
キュグヌス号や今後の船の寄港の為に象の鼻のような波止場を作り、また、浄水場と水素発電所を岸辺で無理やりに作り上げた。
そして、コンスタンティーノの広さは最初は0.3平方キロメートルしかなかったが、最終的に0.5平方キロメートルほどに広げて仕上げた。
おそらく百人程度の住人が生活していく場としては丁度いいかもしれない。
このコンスタンティーノの場所を日本地図の富山市と考えれば、波止場となる象の鼻先は北を示す。
住民の住居地は南側となるが、南側の城壁は高くして外敵に対抗できるような見張り台完備の要塞にし、また、要塞よりに住宅街も構築し直した。
住宅街と言っても石造りの集合住宅だ。
瓦礫となった家々を再構築したのだが、住居が積み重なって立てられている段々畑のように見える集合住宅群となっている。
専用庭やルーフバルコニーを持ったメゾネット型の部屋ばかりの、城みたいな装飾をされたピラミッド型マンション、といった方が解りやすいだろうか?
アルバートルの故郷を徹底的に壊したような気もしたが、アルバートルは出来たばかりの砂まみれの建築物に目を輝かせてくれた、と思い出す。
そうだ、俺が彼をダグド領に呼び戻すまで、彼は要塞の方ではなく集合住宅の方の環境整備を朝から晩まで隊員達と共にしていたのである。
ガルバントリウムの軍団に襲い掛からせるためのデコイだった事も忘れて、だ。
今現在、リリアナだけではなく、シロロが連れ込んだ百人のデミヒューマンが住み込み始めたらしき建物を、俺は過去のアルバートルを思い出しながら感慨深く見つめた。
俺は久しぶりのコンスタンティーノの姿に感嘆するばかりだ。
リリアナは取り残されたと泣くのではなく、本当に一か月かけてコンスタンティーノの町を一人で復興させてもいたようなのである。
砂塗れだった家屋も道路も、砂を探す方が難しいほどに砂を掃き出してあり、青い海を臨むのは白く輝く石畳とそれらを彩る深い緑、という素晴らしい風景となっているのだ。
俺が町中にはりめぐらし用水路には透明で綺麗な水が循環し、そこには淡水魚の鱗の煌きも見える。
用水路があるために町の住宅街以外では、様々な作物が植えられて青々と生育していた。
「すごいな。これだけでもリリアナにこの町を捧げたいよ。」
「うふふ、頑張った甲斐がありましたわ。」
俺は再び彼女の領地をぐるりと見回し、空中庭園のように部屋部屋のベランダにも専用庭にも緑が溢れている様にうっとりもしたが、俺の目が意図しなかったものまでも捕らえた事で思考が一瞬で硬直した。
真っ赤な赤毛の可愛らしい美女と彼女と来月結婚する予定の男が、なんと、ほとんど夫婦のような仲睦まじい様子で上階の部屋のベランダにいる様子が見て取れたのである。




