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転生先が物語分岐の中ボスという微妙な立ち位置だった  作者: 蔵前
文伐(ぶんばつ)の法は十二はあるらしい
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大喜利でも構わない、から、案を頂戴

ここまでのあらすじ

イグナンテスによって歪められていたガルバントリウムは魔王復活したシロロによって粛清された。

また、シロロの魔王の姿が天使の姿にも見えた事から、今後ダグドを神の名で襲う事は無いという一時の平和は手にいれた。

エランと旅に出かけたシロロが友達百人連れて戻って来るまでは!(by ダグド)

 魔王様な息子は無事に帰宅した。

 シロロは戻るや否や、百人のデミヒューマンなお友達を連れて真っ直ぐにダグド領の山の天辺まで昇り、そこでピクニックをパーティを開催した。

 もちろん、彼と彼のお友達が貪り食うことになった大きなケーキやお食事等は、俺の妻でシロロの義母となるエレノーラや、俺の娘でシロロには姉になるノーラ達の手によるものだ。

 俺はそんな彼女達によって彼女達が揚げた鳥肉、チューリップにした鳥肉の骨部分に紙リボンをつける仕事をさせられた。


 さて、大いに食べて楽しんだ魔王様は、ピクニックパーティが終わるや、友達百人は大変でしたと俺に嬉しそうにして報告した。

 汗ばんだ頬に白い髪の毛が貼り付き、真っ黒の大きな目はキラキラと輝いている、という、幼稚園帰りの子供のようなシロロは何と可愛いのか。


「そうか、そうか、頑張ったな。」


「はい!お家を飛び出た子は百人友達を見つけないとダグド領に帰れないルールなのでしょう。ダグド様はいつもそう歌ってます。それで僕は一日でも早くお家に帰れるようにと一生懸命に頑張りました!」


「……!あ、ああ、そうか!よく頑張ったな!」


 俺は一か月ぶりのシロロの頭を撫で、抱き上げ、彼が嫌がるほどの頬ずりまでした。

 それぐらい彼の不在が寂しかったからでもあるが、俺は少々やけっぱちになってもいたのである。


 俺は適当な変え歌を無意識に歌う癖があるようなのだ。


 その無意識による歌のせいでシロロに誤解を与え、彼を一か月も世界を放浪させてしまったのであり、その誤解によって彼は帰る場所のないデミヒューマン達百人を集めてダグド領に連れ込んでしまったのである。

 俺はその結果を身に受けた事によって、その癖を何とかするべきだとその時も、そして今この時もとっても真摯に反省している。


「だから、本気で反省しているので、良い案をお願いしたい。半分お遊びな案でもかまわない。俺はとっても追い詰められているんだ。」


 見張り台の会議室にダグド領の保安隊員達を集めての会合だが、そこに集まってくれたのは隊長のアルバートルただ一人で、彼は俺を虫けらを見るような目で見下げ果ててくれていた。

 彼の青い青い海のような瞳は、時々魔物の様に海が荒れてしまうように、俺の胸を抉るぐらいに冷たい輝きを持っていた。


「無言なだけのその返しは止めて。」


「自分が仕える領主様がそんな他力本願ではと、仕える自分が悲しくなっただけです。」


「全然仕えるって感じじゃないくせに。」


「何か?」


「……いえ。」


 目の前のアルバートルの姿は、ひざ下程度のステテコとも呼べる短パンに生成りのヘンリーネックシャツという適当なものだ。

 こんな姿で詰所に詰めて領主を出迎える時点で首にしたいが、俺も似たような格好で彼らの仕事場と言うべき会議室に押しかけているのでそこは黙った。


 ここ二日ほど、五月でありながらうだるような真夏日となっているのだ。


 だから俺やアルバートルの姿が仕方が無いとも言えるのだが、やっぱり俺は領主様でもあるので、夏用の制服も渡しているのだから夏用の制服を着ていて欲しかったとアルバートルを恨みがましく見つめた。


 しかし、俺に見つめられても何の動揺も見せない男は、ステテコでも悔しいくらいに絵になっていた。

 神様の像が動き出したような完璧なアルバートルが履けば、ステテコだって海辺のサーファーが履くボードショーツにしか見えないのだ。


 そうだ、俺は彼の外見に惚れて自分の領土に引き入れたぐらいじゃないか。


 そして、当時は行き場のなかった先の無い男であったアルバートルは、今やウェーイ状態だからか、そんな過去の恩も完全に忘れ去った言葉を俺に投げた。


「言っても良いのならば言いますが、無いですよ。あなたが欲しい魔法の言葉も、良案だって一欠けらもありません。俺はどうやってあなたとは関係ないを貫くか、そっちの案こそ欲しいくらいです!」


「いや、ちょっと待てよ。君は百鬼眼システムを持っているんだろ。世界を見通せるその素晴らしいシステムでどうして気が付かなかった。気付いていただろう?いや、気付いていたはずだ!君こそ今までの仕返しとか考えていたんじゃないの!」


「な、なにを言うかな!そんな酷い事を考えるわけ無いでしょう。そんな目に遭っていたって知ったら、ここぞとばかりに助けに行きますよ!大体俺の故郷だった土地でしょうが!そこにあいつを取り残したいと思うわけ無いでしょう!」


 アルバートルの声がめちゃくちゃに裏返っていたことで、実は知っていて黙っていたのだと俺は確信したが、結果を考えれば彼が知らなかったで通したいのも俺は理解するしかない。


「で、どうしよう。」


「普通に謝ったらいかがですか?」


「謝ったら許してもらえると思う?」


「謝って下さい。そして、あの町を取り戻してください。俺の故郷なんです。」


 アルバートルは本気で涙目だった。

 このままでは彼は故郷の土地に一歩も入れないと知っているからだ。

 先だってのガルバントリウムと通商によるダグド領への侵攻時に、彼は自分の故郷を奪還して俺に捧げるという事までしたのである。

 海辺の町は港としても使い勝手がよく、この世界に無いはずなのに俺が作っちまった、モーターボートや水上バイクってやつで遊んだりも出来そうだったのだ。

 アルバートルの頭の中では。


「――君は海遊びがしたいだけだよな。」


「失敬ですね。傷つきましたよ!ああ、さすが!娘を一か月も忘れ去っていた人ですね!」



 そう、俺はシロロの帰還により、ダグド領から姿を消していたリリアナという娘の存在を思い出したのである。



 ピクニックなあの日、俺はシロロに旅はどうだったと尋ねた。


「はい、楽しかったです。独り立ちした大人はお家に帰れないって泣いたら、リリアナ先生が帰る方法を教えてくれたの。リリアナ先生は言ったの、いつまでも子供でいていいのよって。それで、ダグド様のお歌を思い出しなさいって。フジサンというお山はダグド領の山の事よって。」


 魔王に羽化したシロロを成長しきったものだとして、俺が彼を大人扱いをしてしまっていた事も敗因だった。

 あの日の俺は、ピグミードワーフの村に行くと言い張ったシロロに対して急いで餞別を渡すのではなく、「すぐに夕飯の時間だから帰って来い。」と叱りつけるべきだったのだ。

 餞別を受け取った事で家に帰れなくなったと勘違いして落ち込んでいたシロロは、復讐に燃えるリリアナには良いカモとなった事であろう。


 シロロがダグド領に帰って来なかったのは、リリアナに唆されて百人の友人を集め、その友人達をリリアナに捧げるためでもあったのだ。



 リリアナは取り残されたコンスタンティーノを現在占領しており、シロロが連れて来たデミヒューマンをそこの住民にしてしまっている。

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