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突撃(ぶっこみ)

 俺は懐かしい思いで聖なる建造物に意識を飛ばしていた。

 俺と友人が既存の宮殿を貼り合わせた様にして構築した、この世界を救う人々が生活していたはずの建物だ。

 大理石を積み上げて作られた壁や床は白灰色で清廉で、しかしながら天井にはシスティーナ礼拝堂のように絵画で彩られ、十字路となる床にはそこだけ黄色と赤で神を現わす紋章を描いてある。

 魔族との戦いで友を失い、自らも呪いで傷ついたプレイヤーに、慰みとなるべき神の家の総本山。


 そこは完全に薄汚れた地獄となっていた。


 俺の世界は赤黒く腐った血肉で汚され、白灰色だった場所を探す方が難しい。

 宮殿を守る衛士はどこに行ってしまったのか。


 いや、勿論そこにいる。


 アルバートル隊が過去に着ていたような銀色の兜を被り、やはり、彼等が着けていた胸と背中だけを鎧を身に纏っている聖騎士だ。

 白いひらりとした布が銀色の鎧兜と相まってとても格好の良いはずが、服や鎧兜から出ている生身の部分、そこは既に生きてはいない人の皮膚である。

 白かった布は膿んだ血肉で七色に染まっていた。

 隊長らしき鎧兜が顎をあげた。


「あるばああああああとるぅうううううう。」


「ああ良かったよ!俺達は逃げていてね!しかし、畜生め!お前は腕が立ったはずだろう!ジョーイ!そのざまは何なんだ!」


「ちょっと!アル!」


 真っ黒の俺の竜騎士が、彼等の目の前に立ち塞がった一ダースの衛士に躍り出た。

 俺の作ったスチールの剣を振りかざし、たった一騎で衛士の群れに飛び込んだアルバートルは、俺達が撃ったミサイルそのままだ。

 彼はまず手前の一人を剣ごと切り裂き、しかし、その彼を待っていたかのように、衛士達はアルバートル一人に向かって剣を突き立てた。


「われは呼ぶ。古とアースの契約による大いなる盾を!」


 大理石がクリームのようにアルバートルの周囲で溶け、彼を守るように屈んでいる彼を多い被すようにしてミルククラウンのような盾となった。

 硬化した大理石の盾によって、次々と剣が弾け砕ける音が響く。


「団長!そのまま動かないで!」


 アルバートルの盾を作ったフェールの後ろから若者が飛び上がり、その青年は猫が空を舞うようにして滑空しながら両手に持つ銃で銃弾の雨を降らせた。

 カイユーはアルバートル超えた先、敵の軍団をアルバートルと挟む形で舞い降りた。


 そこで、ガチャンと銃を持ち替えた音が響く。


「ちょ、まて!カイユー!俺ごと撃つ気か!」


 アルバートルはフェールの作ったミルククラウンの中にしゃがみ込んだ。

 同時に、ショットガンのいい音が廊下で連続して響き、俺はイヴォアール達が鼻を鳴らして自分の間抜けな団長を笑った姿を見た。


「お見事。グールが銃弾で死ぬとは思わなかったが、見事だ、君達。」


「岩塩ですよ!すごいや、シロちゃんは!やっぱりすごい!」


 グールをショットガンで倒したばかりのカイユーは声をあげて喜び、岩塩のカスを浴びることになった考え無しぶっこみ隊長は、しゃがんだままの格好悪い姿で苦虫を噛み潰した顔をした。

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