攻め入る時は好機を逃すな
発射台から飛び立った巨大な鉄の塊の四本は、十数分後に俺達が印をつけた座標に次々に深々と突き刺さった。
百キロ以上先の地での出来事のはずなのに、地盤が固いダウグド領であるはずなのに、深くズズンと地響きのような揺れが足元で起きた。
連続した四本の鉄杭は、ガルバントリウムのガルバンシア宮殿の四方を囲むようにして深く深く穿たれたのである。
「アルバートルめ。罪人と名指ししたイグナンテスを檻に入れ込んだか。」
四本のミサイル型の鉄くずの二本は教皇が住む棟と別棟を結ぶ二本の回廊を完全に潰し、一本は大昔の教皇の名が付いた塔を粉々に砕けさせた。
この塔は教皇が信者に言葉を放つときに使用する大事なバルコニーがある場所だ。
そして、最後の一本は、宮殿のエントランスとなるそここそだ。
「酷いな、あいつは。鼠のように這い出て逃げろと言うのか。」
しかし、俺の言葉に応えてくれる相棒はいない。
方針が決まれば動き出せるものだが、アルバートルはスカッドミサイルを撃ち込むやダグド領から忽然と消えたのである。
あの馬鹿男と、俺は自分を罵る他は無い。
スカッドミサイルを以前にガルバントリウムに落として、その衝撃によってガルバントリウムの術者達に張られた結界を破った事は経験済みだ。
ガルバンシア宮殿の結界がスカッドミサイルが落ちたそこで破れてしまう事は想定内であり、アルバートルがその隙にイグナンテス暗殺に宮殿に乗り込む事なども俺は想像しておくべきだったのだ。
彼が連れて行ったのは、フェールとシロロ。
いや、そのためにフェールを呼び寄せさせたのだろう。
イヴォアールはモニターの向こうで深々と俺に頭を下げた。
「君も加担していたのか。」
「すいません。俺達はあんな殺戮を二度と見たくないのです。あの村は、アルの妻子が眠る村です。アルが一度は骨を埋める覚悟をした村なんです。」
「――あいつは嘘ばっかりなんだな。妻への愛は無い。嘘ばかりだ。あいつは妻が司祭の愛人だろうと愛していて、妻のいる村も愛していたんだな。」
「――それは俺にはわかりません。俺に解ることは、あいつが関わったという理由だけで虐殺の生贄にあの村が選ばれた、という点です。あいつがそれを許すわけがない。」
俺は大きく息を吐くと、俺の魔王に声を送った。
「シロロ。今すぐにそこに旗を立てろ。俺の竜騎士は六人だ。三人が足りないだろ。俺も援護をする。」
モニターの中でイヴォアールは俺に右手を胸に当てての礼をしたが、俺はその返礼代わりに敵地のど真ん中に彼を含めた三人を送りつけてやった。




