まち、クラフト ①作りたい町を考える
朝日が昇った頃には戦闘野郎達は既に勝利を手にして寝袋に転がっている有様で、シロロはベッドが良いと城に戻っていたが、唯一の女性であるリリアナは楽しそうにお揃いの寝袋に潜って転がっていた。
「せっかくですもの!私も野宿がしたいですわ!」
ウキウキ顔のリリアナの言葉に男連中は複雑そうな顔をしていたが、彼等は次の戦闘があることを理解している。
また、リリアナにダメ出しをして彼女から仕返しを受けたい男など、俺を含めてダグド領には一人もいない。
よって、誰もリリアナに突っ込むこともなく、アルバートルを含めた全員が無言のまま休息を取れるうちに取ろうともそもそと寝袋に潜ったのである。
俺は眠る彼らの寝顔を見回しながら、俺に捧げられた町一つ分をどうするべきかと頭も悩ませていた。
宰相を倒した後、アルバートルは余計な叫びを俺にあげたのだ。
「我が故郷、我が町、このコンスタンティーノをダグド様に捧げます!」
俺が「いらねぇよ!」と騒ぐ間もなく、元町長の息子の言葉でコンスタンティーノ全土は俺の領土の色に染まり、俺はこの廃墟同然の町を破棄どころか生き返さねばならないという重責を背負ってしまった。
俺がさじを投げた場合のアルバートルの心情とエレノーラのがっかり顔を思いやれば、俺は嫌々ながらも町づくりというものを手掛けなければいけない。
「どうするかな。まず、水と電気の供給か。」
この町が栄えていたのはクゼル川、常願寺川と似たような流れに常願寺川よりも急流である川が通っていたからでもあるが、ここが砂漠になっていたのは宰相の襲撃だけでなく、そのクゼル川の源となる山そのものが崩れて水の供給が無くなったこともあるのだろう。
「本当は山に囲まれていた平野で農業と漁業でかなり栄えていた町だったのだな。急すぎて船の航行どころか橋も作れないほどの川ならば水力発電も出来たが、いやはや、無いのであれば俺の得意な水素発電に旧式方法での海水淡水化かな。逆浸透膜は専門外だから、魔法世界を良い事に魔法の火力で海水を蒸発か。あ、でも海水を直接電気分解すると塩素系の危険物質が出てしまう。」
俺はそこまで考えたが、リリアナの寝顔が目に入った事で、水の蒸発に大量のエネルギーを必要としない方法があった事を思い出していた。
超音波で海水の淡水化。
その後には電気分解による水素発電。
そして、水素発電のエネルギーがあれば町への電気供給と蒸発法によって大量の海水淡水化も可能となる。
魔法世界だから作れるクリーンエネルギーだ。
砂漠で潰れた貯水池の整備と植林も重ねれば、おそらく、アルバートル達の第二世代が大人になる頃には豊かな町に戻っているかもしれない。
俺はやることが決まったと、全員を起こす三時間後が待ち遠しくなっていた。
起こした竜騎士には俺からのクエストだ。
さあ、材料の為に金属物質を多く含むサンドサーペントを倒しておいで、だ。




