第一の関門
フェールという勇者兼賢者のお陰で俺は自分のいけなかった点を知るというクエストを達成したので、アリッサ姫が篭る娘達専用住居に戻ってみた。
「あなた?」
俺を待ち構えていたのは金色のラスボスだ。
彼女は俺が娘をさらに傷つける土産を持っていないのかを調べる関所となって、俺を検分するために待ち構えていたのである。
これはもう、間違った答えを言おうものならその場で断罪されるという弾劾所に近く、俺はスフインクスという魔物に対峙しなければならない単なる旅人の気持ちである。
スフィンクスはなぞなぞに答えられない旅人を殺してしまう恐ろしい魔物なのだ。
普段は真夏のひまわりのように美しくおおらかで、俺を懐かしく安心させる妻であるが、今は彼女自身の輝きを俺を焼き尽くす武器のようにして輝かせている。
「あなた。」
「あ、あの。俺はろくでもないことを言ってしまったと分かったよ。そうだね、俺に命令されての婚約じゃ、互いに好き合っても互いを信じられない状況になるよね。うん、考え無しだった。」
「うふ、あなたったら。で、その模範解答はどこで手に入れたの?アリッサの秘密ごとをそこらじゅうに話して回ってはいないでしょうね。」
うわあ、俺の妻はスフィンクスどころか人を石化させるゴーゴンだった。
「え、ええと。ア、アルバートルさんと、フェール君です。」
「この、馬鹿者!どうしてよりによってその二人なの!」
「ええ!アルバートルは役に立たなかったけど、フェールは凄く親身になってくれたよ!」
「もう!デリカシーのない兄が役に立たないのはわかり切っている事だし、アリッサが一番知られたくない相手でしょう。フェールはリリアナに夢中だって噂の子でしょうが!アリッサはリリアナとアルバートルが温室に行った噂で落ち込んでいるのよ!どうしてわからないの!」
「いや、だって、温室事件はヤクルス事件でしょう。」
「あの馬鹿兄がリリアナとイケナイ事が出来るって鼻の下を伸ばしてついて行って起きた事件でしょう!」
「あ、そうだった。」
俺はアリッサにおっぱいが大きくなくたって魅力的だよ、と伝えるべきだったのか?
いや、そんなことを口にしたら普通にセクハラで、そう、男性の性欲を基準にして女性を語ることこそ女性蔑視的行為であり、絶対にしてはいけない事ではないのか?
あ、でもここは中世的生活様式と風習の世界でもあった。
「あ、ねえ。エレノーラ。アリッサは二年でリリアナみたいになりたいって考えているの?それでなれないのはわかりきった事だけどさ、それで落ち込んでいるの?確かに女らしいとリリアナは表現されやすいけど、それは外見だけの話でリリアナ自身その評価は好きじゃない人でしょう。それにアリッサはアリッサのまま大人の女性になって欲しいと俺は思うのだけど。」
「もう。最初っからそう言ってあげればいいのに!」
俺はまた怒られた。
納得できん!




