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お世話係って

 とりあえず、アルバートルもリリアナも俺の目的にはそぐわないという事で、アリッサに対して俺が何が悪かったのか確認するために俺は相談相手を変えることにした。


 ただし、俺の目的とする男は迎賓館にはいなかった。


「あれ、フェールはどこに消えたの?あの子は病み上がりでしょう。アルバートルもいないし、お付きで消えたの?」


 アルバートルがいない隙に居間を清掃している高潔な男に俺は尋ねており、俺はどうしてこんな素晴らしい男を虐めていたのだと後悔しきりだ。


 イヴォアールは褐色の肌に銀目に銀灰色の髪を持つという、月夜の砂漠が似合う王子様のような風貌をしている美男子である。

 真夏の青い海を想起させるアルバートルと対照的だと俺は常々思っており、けれど対照的だからこそ互いの魅力を際立たせるのか、彼らが並び立つ時は素晴らしい出で立ちだと見惚れてしまうのが常である。


 ただし、今現在のイヴォアールは三角巾を頭に巻いてエプロン姿という、王子様どころか昭和の新妻のような残念な出で立ちだ。


 けれども、ここにいないアルバートルこそ最近は昭和初期の親父さんみたいな丹前姿なので、実は今ほど二人が並び立つ姿が見たいと思った事は無い。


 絶対に昭和な新婚夫婦みたいになるに違いない。


 さて、俺の脳内で新妻と揶揄われている事を知らないイヴォアールは、俺がごめんなさいしたくなるほどの満開の笑顔を俺に見せ、俺が抱いていた彼への高潔とかそんな称賛を返せと言いたくなる言葉をさらっと口にした。


「フェールは見張り台にカイユーと閉じ込めました。フェールはカイユーのお世話係ですから、カイユーが放免されるまで彼も見張り台に缶詰めですね。」


「お世話係って、なんだ、それ?」


「ああ。共通の冗談ですよ、俺達の。フェールはカイユーを誑し込んでこの団に潜入してきた奴ですからね、俺達に団から追い出されないようにって、もういじらしいぐらいに必死でカイユーの世話をしていたのですよ。それはもう、ティターヌが可愛いと言って腹を抱えて笑う程に。フェールがカイユーの世話をする姿は、お兄ちゃんになったばかりの幼児みたいで微笑ましいものでした。」


 はははと懐かしむようにしてイヴォアールは瞳を銀色に輝かせて笑うが、その瞳が狼のようだなと俺が感じたことで俺は頭に浮かんだまま尋ね返していた。


「カイユーの面倒を見ないと追い出すぞって、君達はそんな空気をわざと出していた?フェールは空気を読むのが上手な男だものね。」


「いやだなあ、ダグド様は。」


「そうだよね。いくらなんでも。」


「ええ、その通りです。団長のせいでカイユーはあの育ち方でしょう。団長はカイユーを咎めるどころかカイユーを甘やかすばっかりだ。それでの後始末は俺達ですよ。俺達も偶には手を抜きたいじゃないですか。フェールは良い奴ですよ。」


 俺は直情馬鹿な所のあるアルバートルが死なずにここまで生き残って来れたのは、俺の目の前で爽やかに笑う根性悪がいたからだと納得していた。

 そしてフェールに少し憐みを感じたところで目的を思い出し、俺はイヴォアールに暇を告げた。


 この領地の大事な子供になるためにと考えていたからか、子供のくせに大人の振る舞いを必死にしていたアリッサの気持ちを、きっとフェールだったら理解できるだろうと俺は希望を抱いたのだ。

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