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爛れた男とおっかない女とその親

 迎賓館を堕落の館に変えた領地の保安隊長様は、俺から奪ったばかりの新品の浴衣に鶯色の丹前を羽織る形でだらしなく着込んでソファに沈むようにして座っているが、持ち前の美貌のせいでその姿も一枚の絵画のように見えてしまうから不思議だ。


 そんなだらしない態度どころか、最近ろくでなし度が加速していると有名な彼のくせに、俺の申し出を聞くや俺を腐れものを見るような目で数秒ぐらい俺をねめつけてきたのだ。

 そうして俺をいたたまれなくして置いてから、彼は口元を引き攣ったようにして歪めて見せた。


 とりあえず笑顔ともいえる表情だが、俺は彼の罵りを受ける覚悟はした。


「いいでしょう。」


「え、いいの?」


「ええ。二年間身ぎれいでいる、という所や、アリッサが俺を誘わないの所を削除してくれたら、俺はその婚約にはオッケーですよ。どうせ結婚するんだ。若い体を散々に楽しみたい。」


「――すいませんでした。俺が間違っておりました。同じことを言ってアリッサをもっと傷つけたみたいでね。俺は誰かに叱られたかっただけだから、忘れて。」

 俺は素直にアルバートルに頭を下げた。


「はは、俺こそ冗談ですよ。あなたを叱るどころか、あの可愛いアリッサを傷つけていたとしたら俺こそ謝らなければいけません。ですけどね、いいですよ、ダグド様の申し出を受けても。ははは、身ぎれいもオッケーです。あの魔女から俺を守ってくれるなら、アリッサちゃん様々かもしれませんし。いや、アリッサちゃんに泣きつこうかな。俺はリリアナに虐められて辛いって。」


「ああ、君ったら。リリアナは蛇族だって知らなかったって言ってたじゃない。本気で竜族の卵だと思っていたらヤクルス族が孵化して吃驚したって。」


 彼は反抗期に失敗して不良化した青年が親を見るような目で俺を眇め見ると、つまり、何だこらあ!という目で睨みつけてから、あの大嘘吐き女と吐き捨てた。


「俺にくっついたのがヤクルスって気づいたならば、どうしてその場で俺に教えないのでしょうね。なにが、竜族は甘えん坊さんなの、大事にしてね。ふざけんな!あの、アマ!」


 完全にいきり立ってしまった彼は、目の前のティーテーブルを蹴とばして、だがテーブルはびくともしないどころか彼の爪先こそ痛かったようで、彼は爪先を抱え込んで丸まった。


 間抜けめ。


 アルバートルがきっと蹴って壊すだろうから、高価なガラス製のテーブルではなく壊れない金属製のテーブルに変えて欲しいと、イヴォアールが俺に頼んで来たのである。

 イヴォアールは六月に花婿になることが決まってから、彼の忠誠を義理の父となる俺の方へと傾けてくれている。

 俺も日々可愛くなっていく彼に応えて、モニークにイヴォアールと一緒に乗れる飛行機を作ってやろうと持ち掛けたが、彼女は俺が以前に作ってやって大破した一人乗り飛行機じゃないと嫌だと俺に言った。


「結婚したらダグド様とのひと時が無くなるなら、あたしは結婚したくない。」


 俺が最近イヴォアールに優しいのは、親離れしない娘でごめんねという俺の気持ちであり、積極的に娘を諭す気も無くてごめんね、という気持ちからでもある。


「ぴゅいぴゅい。」


 ひゅうっとカーテンレールから飛んできた生き物がアルバートルの首筋にぺたっと張り付き、俺に向かってきゅいっと鳴いて俺に抗議の目線を送ってきた。

 クリーム色に緑色の差し色があるような翼を持つトカゲは美しくも見えるが、顔が人間のようでもあるという点が少々不気味に感じさせる。

 アルバートルの胸元に散々張り付いて離れなかったヤクルス族の赤ん坊は、観念したアルバートルによって餌付けられ可愛がられることで彼の胸元から旅立ちはした。

 しかし、それはほんの数メートル程度であり、やっぱりアルバートルから離れない生き物となっている。


 俺は小さな生き物の存在に溜息をつくと、リリアナには注意するべきかもとリリアナがいるだろう所に瞬間移動した。

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