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作文って大人が子供の内面を読むためのものだよね

 俺も子供の頃には散々に作文を書かされた。

 作文には先生が気に入る文章や方向性があり、通信簿の点数を考える嫌な子供の俺は、先生に余計な目を付けられないようにと、先生が何を望むかを考えながら書いたと嫌な思い出ばかりが思い出された。


 読みたくも無い全く感銘を受けなかった物語に感動したと書き、本当はこんなことをされて悲しいという事を書かずに先生のお気に入りの生徒の良い所を褒める文章にしたりという記憶だ。


 俺というろくでなしを作ったのはそんな国語の時間だったかもしれない。


 俺は悲しい過去を思いながらも幼い子供の作文を読むという場に立ち会えた、そう、父兄参観日に忙しくて来れない両親の代りに必ず参加していた祖父の気持ちになりながら教室の後ろに立っていた。


 ああ、お祖父ちゃんはこんな気持ちだったんだね。

 なんだか感動で涙迄出そうだ。


「ダグド様。まだシロちゃんは何も読んでないっす。」


 俺は既に感動で涙を零していたらしい。


「すまない。俺は父兄参観を体験できたことに感激しているんだよ。」


「そうですか。」


 意外と薄情なフェールを俺は忘れることにして、バナナなシロロを見守ると、彼は両腕で翳した紙に書かれているであろう文章を読み上げ始めた。


「僕は魔王です。魔王ですから世界の事を知らなければいけません。そして、魔王であるからこそお父様を助け、お父様の領地を守るために日々努力をしなければいけません。」


 ここで俺の涙腺は崩壊し始めた。

 ああ、なんて良い子の魔王様なんだ。


「僕はお父様が忘れているポータルに仕掛けをしました。」


 俺はフェールに肩を打ち付けられた。

 打ち付けられただけでなく、忘れてんなよ、と低い声の罵声を浴びた。


「ごめん。」


「てか、あったんですか。ポータル。そんで放置ですか?」


「いや、だって、洗濯ものが良く乾くし。」


「洗濯物って、あんた!」


 俺はこの無礼な若者を放り出したくなってきた。

 畜生、コイツの報告を受けた後でのアルバートルが怖いぜ。


「仕掛とは、リリアナ先生が教えてくれた指をも切ることが出来る釣り糸をポータルに貼り渡すというものです!」


「え、うそ。そんなことしたら。」


 俺は侵入者が網目状にミンチになってしまう状況を思い浮かべてしまった。

 俺を責めていたフェールは俺を責めるのをやめたばかりか、やべぇ、と本気で脅えた声を出してリリアナを見返しているじゃないか。

 そんな俺達の動揺を知るわけもない純粋なバナナな魔王様は、作文を読むのを止めて椅子の下にある何かを引っ張り上げた。


「見てください。僕はこんなに大きな獲物を捕らえることが出来ました!」


 シロロが掲げたのは敵の大将かもしれない生首だった。


「僕はリリアナ先生がダグド領の最高の先生だと思います。これからも先生からお勉強を教わって、魔王らしく賢くなれるようにがんばります!」


 俺とフェールは感激でない方のキャーという悲鳴を上げて、情けなくも教室の隅で抱き合うしかなかった。


 どうして子供達は平気なの!

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