二度あることは三度あると言いますからね
ここまでのあらすじ
カイユーは記憶を取り戻し、アルバートルの兵士に戻り、俺はアルバートルに丹前や迎賓館などの色々を奪われた。
それでも平和ならばいいじゃないか、と俺は思うのだけれど。(by ダグド)
平穏に戻ったかのように思えた毎日の中でも不安ごとというのは必ず残るものであり、俺は妻の妊娠の経過ももちろんそうだが罪を犯した娘の今後こそ大いに不安を抱いていた。
失恋によって精神状態がまともで無かったと言えども、彼女は人に対して銃を向けて引き金を引いたのである。
それも、二度も。
野菜工場の壁に穿たれた二弾目の銃弾の痕を目にしたことで、俺は今後を考えて大きく頭を抱えて悩むしかなかった。
「悩む事など無いですよ。シェーラちゃんは本気じゃ無かった。まともな考えも出来る状態じゃ無かった。それでいいじゃないですか。」
「この銃弾の痕を教えてくれた君がその見解か。」
フェールは俺に対して肩をすくめた。
「全く何も知らないでいるよりも、知った上で見守る方が良いでしょう。」
「確かに。三度めが無いと言えるのであれば。」
「団長は彼女の銃を破壊しましたし、あとは、彼女が立ち直るだけですね。俺達に着物を作ってくれるいい子なんですから、誰も彼女を非難なんかしませんよ。」
「でも、俺に銃弾の痕を見せたんだ。」
「ええ。この弾を打ち出す銃がどこから来たのか、俺達はそこだけが不安で一杯ですからね。」
俺は気軽そうに俺が考えるべきことを言い放った青年を見返し、この見解は彼だけのもので、彼が現在不安に思っている事なのだと理解した。
「そうだね。これは考えなければいけない事だ。シェーラがどこでこんな銃を手に入れたのか。あの子は外に出たことが無かったからね。」
「ええ。やぶ蚊どもが侵攻してきた時まで出たことがありませんでしたね。」
「そうか、あの時に。そうだね、知った相手から繋ぎを受けたのか。でも、どうやってあの日にあんなことが起きると分かっていたんだ?」
「まあ、そうですよね。俺も結局はそこで考えが行き詰るから、ダグド様に確かめるのが一番かなって思いまして。あの銃はダグド様手製で、あの日の襲撃は偶然だと確認できれば安心できるでしょう。」
「あ、ああそうだね。大事な事だ。あの子がここから出たがっていたのはカイユーへの恋心で済ましちゃいけなかったんだ。誰かから干渉を受けているから、彼女はあそこまで追い詰められていた、そうとも考えられるんだね。」
俺はこれはいけないと頭に手をやり、何事にも一番知っているけれど黙っている事の多すぎる魔王に伺いを立てることにした。
「シロロちゃーん。」
口元に手をやって叫ぶ俺のみっともなさは、俺自身がよくわかっている。
フェールに呟かれる事ぐらい平気だ。
「やべぇよ、このおっさん。結局シロちゃん頼みかよ。」
うん、平気、たぶん。




