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真っ新な雪を踏み固めていくように②

 俺は自分が抱いている疑問をとうとう口に出していた。

 照明弾の持ち主について、だ。


 カイユーの行方不明を騒いでも、男達の誰も彼女の不在を言及しなかった。

 彼女が照明弾銃をカイユーに渡した、という事であるのに、だ。


 アルバートルは大きく息を吐いた。

 それでも彼が歩を止める事は無く、俺も彼と一緒に歩き続けた。


「俺は君が怪我を負わせられた事が許せなくもあるんだ。」


「嬉しいですね。心配してもらえるのは。ですけどね、俺にはこれっくらいね、大したことじゃないんです。俺は別れ話が下手で、何度も女には刺されているので、ええ、右肩に大穴が空くぐらい大したことじゃないんですよ。この怪我でカイユーと俺とのわだかまりも消えた。カイユーは素直に俺の部下に戻り、再任命であなたの呪いも彼から消えた。オールオッケーです。」


 彼は話しながら頭に巻かれている包帯を外しだし、そして、軽く頭を振った。

 白に近い金髪は日に焼けた小麦色の肌に良く似合い、長いまつ毛も髪色と同じ金色で、そのまつ毛に縁どられた目元には傷一つなく、彼の誰をも魅了する海のような青い青い瞳を際立たせていた。


「ああ、こっちの方が鬱陶しかった。イヴォアールめ、嫌がらせにぐるぐる巻きにしやがって。」


「俺だってずっと君を罵ってやりたかった。まあ、傷一つない顔で安心したよ。目玉を切るなんて、君はやりすぎだよ。ショックでなんにも見えなくなったで通せばいいだろうに。」


「こっちの方が罪悪感を抱いて素直になるでしょう。ハハハ、目玉なんか切りませんよ。俺はね、自分が一番可愛い男ですから。」


 寝室の血だまりの量は、応急処置をする者がいなければ確実にアルバートルが死んでいたぐらいのものだった。


 彼は死の床で自分で自分の目を切り裂いた。


 目玉を切った彼の死体は、そのまま団員へのメッセージだったのでは無いのだろうか。


 真実に目を瞑れ、という。


「――安心したよ。じゃあ、マギーの所に行こうか。俺は君をマギーから守らないよ。君はなんでも一人でこなせそうだ。」


「はっ、ノーラとそっくりな嫌な奴ですよ、あなたは。」


 全てを隠す雪をいくら踏みしめても、春になって溶けてしまえば全てが晒されてしまうだろうに。

 俺はそう思ってもいたのだが、今は親友でもある男の望むようにするしかないと、また一歩と雪を踏みしめた。

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