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愛情と脆弱

 居間を飛び出した俺がアルバートルに出会う前に、とぼとぼと廊下を歩いてきた三日ぶりの娘に出会ってしまった。


 俺は彼女を裏切っていた三日間が走馬灯のように頭の中でグルグル巡り、彼女に話しかけるタイミングを失い、そのために俺に気が付かない彼女は俺にごつんと衝突した。


「あ、ダグド様。」


 俺を罵るかと思いきや彼女は所在無げな様子でしかなく、そのことで俺の罪悪感は俺の心をさらに蝕み、俺は彼女に話があると月並みな事しか言えなかった。

 そして、どこで二人で話し合おうかと考えて、現在誰もいないノーラ達の住処である屋敷に行こうと彼女を誘った。

 カイユーに起きたことを全て彼女につま開きにしなければならないだろうと、おれはとうとうその状況に覚悟を決めたのである。


――裏切り者や守るべきものを壊そうとした奴は、団長自ら手を下すんです。


 フェールの言葉が頭の中で木霊するのは、俺が最悪な結末ばかり想像してしまう悲観主義者だからだろうか。


「俺が話します。俺が話すべきでした。」


 廊下の影から現れたかと思ったら、ノーラの右肩をがっちりと右手で掴んだ男の眼差しは決意どころではなく、俺はノーラに真実を告げる役割を彼に委ねるしかなかった。

 俺は右手を差し出すと、アルバートルに掴まれていない方の肩、ノーラの左肩にその手を乗せた。


「何かあったら俺を呼んで。君は俺の大事な娘だ。」


 果たして、俺の弱さや罪を知っている娘は、基本通りの言葉を俺に返した。


「もちろんだわ。」


 俺はアルバートルと並んで歩き去る娘の後ろ姿を眺めながら、まるで葬式の日のようだとチラリと思った。

 俺は己の万能感に自惚れてはいなかったか。

 慕われる事を当たり前だと軽く思い、自分を慕うものに対して深慮が全く足りてはいなかったのではないのか。

 だからこそ、俺は人の記憶という人である根幹を奪う呪いをかけてしまったのでは無いだろうか。


 そして、廊下で俺が鬱々と考え込んだ事は、数時間後には俺に返ってきた。



 アルバートルはカイユーに殺されかけ、カイユーは俺の領地の城壁内のどこかに隠れてしまったのである。


 どうして彼が見つからないのか。


 彼はアルバートルの両目を切り裂いて逃げて行った。


 怪我を負った瞳の機能を取り戻すまでアルバートルのスキルは封じられ、カイユーに人質に取られたらしきシロロによって俺も目隠し状態なのである。

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