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投げられた小石は賽では無い、ただの小石だ

 領地内の掃討戦はさすがラスボス対応可能部隊というべきか、サッカーの前半が終わるぐらいの時間で大体は終了し、そして、当り前だがハーフタイムの選手みたいに俺の竜騎士達は全員がへばっていた。


「すごい!お見事!では、領地内に散ってしまった残りの二十三体は俺が始末をつけよう!」


 俺の身体から炎で出来た蛇が数体飛び出すと、それらは俺の領土を飛び交い、兵士の亡霊をかみ砕いては燃やしていった。


「あ、ダグド様ったら酷い。最初からダグド様一人でなんとか出来たではないですか。」


 今日はカイユーの代りの軽口隊員らしいフェールは、シロロのように唇を尖らせてぷりぷりと怒って見せた。


「いやあ、これは君の真似だよ。炎を剣に帯びさせるなんて、さすがに勇者。俺は君のように発想の転換をしてみただけさ。魔法の複合。水の代りに炎でヒドルスを形作ってはどうだろかってね。」


「うわぉ!フェールは勇者志願者だったのですか!立派ですね!」


 皮肉しか聞こえない真面目過ぎるエランの驚きの声に、フェールは俺に向かってひどく顔を歪ませて見せた。


 親父、覚えとけよ。


 そんな小学生の表情である。


「ハハハ、すまないね。じゃあ、フェール約束だ。剣を俺に。」


 彼は先ほどまでの俺への不信など、水洗便所のようにきれいに水に流してしまったようだ。

 黒曜石のような瞳など、空の星を詰め込んだかのようにキラキラさせている。

 そして子鼠のようにちょこまかと動いて俺の目の前まで来ると、俺から授かったばかりの剣を俺に捧げ持った。


「よし。」


 俺はその剣を受け取ると、出来る限り厳かに見えるようにして、両膝をついた彼の肩にその剣を触れさせた。


「勇者フェールを俺の竜騎士として永劫に認める。」


「え?」


「どうしたフェール?」


「え、どうして勇者つけるんですか!確かに俺の中で教会聖騎士の肩書は完全に消えましたが、代わりに勇者になってしまったじゃないですか。勇者の後ろに、なんか俺が前に考案したダグドさんマークがあるっていう、変な感じです。」


 俺はこの世界の人間にはロープレのゲームのように自分のステータスが見えるらしい事を初めて知り、彼等に驚きと羨ましさを感じてしまった。


 ええ!どうやって見るの!

 俺だってこの世界の住人だよ!


 ただし、何百年も生きている竜という設定のため、俺はその質問をすることは出来ないとぐっとこらえるしかなかった。

 だって聞いたらしつこくこいつらに揶揄われるのは確定だもの。


「ああ、もう!がっかりですよ!」


「ごめん。ちょっとした実験。それにさ、君は面白いからどんな成長するかなって思っちゃってね。適当になったら普通の竜騎士にしてあげるから。」


 俺は一言多いのかもしれない。


 普通、という素晴らしいカテゴリーを取りあえず嫌う中二病のようなアルバートルの部下達が、一斉に歯噛みした音を立てたのだ。


 俺は仕方がないと、なんちゃって司祭やメタルの帝王やらマッドドクターやらと、俺に対してふざけるなと忠誠心が薄まる竜騎士任命を続け、そして、気が付けば目の前にはカイユーが立っていた。

 青い顔の彼はまっすぐに俺を見つめ、俺がやろうとしている事を知っていると彼は微笑んで見せた。


 アルバートルの兵士だけども竜騎士な、任命だ。


 別に今でなくてもよい。

 俺の純粋な竜騎士にしても良いし、そんなパートタイマーのような騎士でも俺は構わない。

 俺は彼を息子として受け入れているのだ。


「ダグド様、あの、俺は、まだ。」


「うん。いいよ。君の好きな時で――。」


「お前の任を解く。」


 広場に落ちたアルバートルの一声。


「お前は俺の部下でも何でもない。大体、お前を徴兵した教会の聖騎士団は今夜のこの時に解散したんだ。お前の居場所だった場所なんか無いんだよ。」


 俺は何を言い出したのかとアルバートルを見返すしか出来なかった。

 その一瞬を俺は一瞬で後悔した。


 カイユーは静かだった。

 自分の剣を自分に突き立てる行為は、それは自然で静かすぎる程だった。


「カイユー!」


 俺は彼を抱き止めようとして、しかし、アルバートルの方が早かった。


「ちくしょう!ああ!お前はどうして俺の対等な戦友になろうとしないんだ!どうしていつまでも俺のちびでいようとしやがる!この、バカヤロウが!」



「だって僕だってダグド様の一番がいいもの。」



 シロロの言葉にアルバートルは情けない声を出して泣き笑い、俺はフェールとイヴォアールにカイユーへのヒールをと叫んでいた。

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