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親は子供を守りたい

 カイユーの目指す所、つまり、ノーラのいる場所だ。

 カイユーがノーラに姿を見せた時点で、ノーラの呪印の解放は不可能となる。


――だったらあいつと別れてこい。


「もう、なんてこと言うのかな、アルバートルは。そんなことを言われたらカイユーは、ああ、カイユーはどうしてアルバートルに逆らわないのだろうって、逆らえないか。ああ、だからアルバートルはいらいらしていたんだ。」


 子供時代に死んでいたはずのカイユーにとって、命の恩人以上であるアルバートルこそカイユーが生きていける世界そのものなのだろう。


――俺の言う事は何でも聞く兵隊に仕上がりましたよ。


「バカだな。カイユーは君の言う事なんて聞かないよ。君がアールを殺してこの領土を出るようなことがあったら、絶対にあの子は君についていく。君が望む可愛いカップルのハッピーエンドなんて無いよ。」


 シロロは俺が死んだら世界を滅ぼすらしい。


 俺は足を止めると、カイユーがアルバートルを自分の生きる世界にしているように俺を世界にしてしまった魔王を抱き直して、自分の赤ん坊のようだと彼を自分の胸に押し付ける様にして強く強く抱きしめた。


「あれ、ダグド様?」


「お前は可愛いよ、シロロ。恐らく、魔王に孵化してこの可愛い外見が変わっても、ああ、俺はお前が可愛いよ。お前は俺の大事な子供だものな。最近は悪さばっかりだが、ああ、お前は可愛いよ。」


 彼はうきゃあと喜びの声を上げると、俺の胸元にぐいぐいと顔を擦り付ける様にして俺に甘え、俺はその仔犬か猫のようなおかしな動きに笑い声が漏れていた。


「本当に可愛いな、お前は。」


「きゃあ!だ、ダグド様!えっと、僕はずっとダグド様から離れませ、……あ、ノーラ姉さまが呼んでいる。えっと、ダグド様。」


「うん、行っておあげ。もともと俺もそこに行く予定だから、いいよ。」


 俺の腕の中のシロロは俺にうふっととろけるような笑みを見せると、俺の腕の中からパッと消えた。


 俺の領土に来たばかりの頃は煩いばかりに俺に纏わりついていた子供は、俺が彼を見捨てないと知る度に俺から簡単に離れて悪さもするようになっていった。



「そして、俺が死んだら世界を滅ぼすんだな。ここに誰もいなくなっても、お前はここに城を立てて、支配者としてここに居続けるんだな。誰かに滅ぼされるまで。はは、あいつが絶望するようなことが無いように俺が守ってやらねば!」


 俺は必死でシロロを追いかけた。


 あの子が愛されたいと思うばかりに、人の間違った願いを叶えてしまわないようにと、大事な子供を守るために俺は走った。

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