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躍らせられているのは魔王か騎士か

「アルバートル。戦闘は中止して広場に集まってくれ。」


 返事がない。


 それどころか、誰もいない雪の積もった広場に俺はいつまでたっても一人ぼっちで、俺を獲物にしようと見捨てられし兵士の亡霊が集まってくる始末だ。


 俺は敵の名前が長すぎると過去の自分へ憤り、呼んでも誰も来ない見捨てられし黒竜な自分が情けないと憤懣やるかたなかった。


「おい!いい加減にしろ!」


 俺の怒りはそのまま俺の身体から四本の火柱として噴き出し、まるでスプリンクラーが水を撒くようにして俺の周囲をぐるっと巡って俺の周りに立つ亡霊達の十数体をいち時に燃やし尽くした。


 それでも大した数は減っていない。

 俺の領地に次から次へと引き寄せられる兵士の亡霊は、次から次へと実体化して行くのである。

 アスランが言っていたように、アルバートル達に元々付けられていた呪いであるのならば、彼等の呪いの大本はガルバントリウムなのは間違いがない。


「ハハハ。賢いな、奴らも。実体のある者は城門で阻まれるからと、散々に自分達で殺した魂を送り込んで来るとはね。反吐が出る。」


 亡霊の一体が俺へ向けて、ぎゅうううんと長い両腕を突き出した。


「バキュウム。」


 真っ黒い腕は俺の呼び出した真空に切り裂かれ、一瞬で霧散した。


「きりがない。遊びはここまでだ!アルバートル!シロロ!」


 誰からも返事など戻って来なかった。

 シロロはわかるが、俺はいい加減にしろとアルバートルに呆れ、右手を額に当てて数秒数えた。

 しかしその行為によって、冷静になった俺の頭の中にしゃきんしゃきんとシロロの鋏の音が流れ込み、俺はシロロの意味の解らない行動の意味が分かってしまったのである。


「ああ、すまなかった。」


 リリアナの音楽祭で、シロロは指揮者のリズムに合わせてダンスをさせられた。


 やる気のないフェールの光魔法。

 憤りながらのアルバートルの戦闘。


 彼らはシロロに踊らされていたのである。


 シロロの目的は敵を倒して貰えるポイントの総取り。


 無用意に子供にゲームを与えてはいけないという先人の知恵を、俺は父親でありながら軽く見過ぎていたようである。


 俺は大きく息を吐くと、領土中に聞こえるくらいの大声を出していた。


「シロロ君は優勝!新作ゲームは君のものだ!残念賞のアルバートルとフェールには俺から参加賞としてみんなで遊べるゲーム機を一台プレゼントだ!」


 なぜ、アルバートル達にもゲーム機を与えたのかというと、彼等が可哀想だからではなく、絶対に、神に誓っても、いや、魔王様に誓っても、魔王様がアルバートルとフェールに唆されたに違いないのである。

 例えば、操られて戦闘させられたらポイントは操った奴のものかな、ぐらいはあいつら二人のうちどちらかが呟くはずだ。


 果たして、俺の目の前に三人が勝利感に溢れた笑顔で、ぽん、という風に出現した。

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