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エンカウント

 考えてみれば俺は自分が動いての戦闘など、アルバートル達が領地に侵攻して来た時以来まともにしてもいない。

 勇んで飛び出た三人を追っては見たものの、俺はどうしようかなって、全てあの三人に任せてしまおうかと投げやりになっただけだった。


「ライトニングソード!」


「しゃっきしゃき!」


「うるせぇ!ガキども!」


 園芸ばさみを頭上でチョキチョキしているだけのシロロの意味が分からないが、彼の意味が分からないのはいつもの事なので置いておく。

 しかし、期待していたフェールの光の矢の魔法が、ソードというには細すぎ微力過ぎで敵の足止め程度にしかならないのは情けない。

 よって、動けなくなった敵をアルバートルが舌打ちをしながらナイフで切り裂いて霧散させているという、彼一人フル回転の戦闘の様子であった。


「なんか、アルバートルにはそれなりなペナルティっぽくて、いいかな。」


 さて、外に出て俺が目にする事になった黒靄によって実体化した亡霊は、両腕が地面を引きずる程に長く、猫背のような姿勢をした二メートル程度の人型に近いものだった。

 幽霊らしく髪を長く垂らしており、顔は若い男性ながら無表情の人形みたいだが、胸元にぽっかりと開く大きな口のような物から怨嗟の籠ったうううという音を響かせている。


 それらの姿についてよっく考えたら、とある荒野限定で出現する見捨てられし兵士の亡霊という、ゲーム上のキャラクターそのものだった。


「なんだっけかな。敢えて荒野にプレイヤーを誘いこむイベントがあって……。」


 俺は思い出して大きく舌打ちをした。


「ああ!これは砂漠に近い荒野でのイベントだ!畜生!」


 俺はアールの父親が住む家へと雪道を走り出していた!


 けれど、俺が彼の家に辿り着く前に、俺の親友であった老人が王様時代のローブ、前立てには金糸銀糸で刺繍がされているものを羽織って俺の目の前にパッと姿を現したのだ。


 いや、外灯の下に一歩進んだだけなのかもしれないが、彼の姿を照らす外灯は、まるで舞台の上の俳優を光り輝かせるスポットライトのようでもある。


 そんな芝居がかった状況で俺の前に姿を見せた好々爺は、皺だらけの亀のような顔にはいつもの愛嬌ではなく、一国を背負っていた時と同じぐらいの威厳と冷徹さを浮かべていた。

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