ジョブチェンジの効果
俺はアルバートルに起きたことにただただ驚いてもいたが、自分が白銀に輝いている事に一番驚いているのは彼自身であろう。
炎のような輝きは数秒で消えたが、アルバートルの双眸には叙勲を与える前とは違う輝きが灯っていた。
「ああ、どう違うか言えませんが、なんだか違う気がします。」
銀色の光は消えたが、アルバートルは自分自身の魅力という光で、プラチナブロンドやら青い瞳やら真っ白い歯まで、きらりと光らせている様にも見えた。
「うん。なんか霊感商法の使用前使用後って感じの雰囲気だ。」
「全然意味がわからない上に、その言葉でせっかくの感動が薄れた気がします。」
面白くなさそうな顔に戻ったアルバートルは、実際にいつものアルバートルさんに戻ってくれて、俺は少々どころかしっかりとほっとしながら答えていた。
「悪かったね。俺だって何が起きたのかわかんないんだもの。」
「あなたがした事でしょう。どうしてわからないかな。」
「君が頼んだ事でしょう。そっちこそわからないの?」
「属性が変わったから、アルバートルにかかる呪いがクリアになったの。」
俺とアルバートルは何でも知っている魔王を見返し、俺達の共通言語という共感力で、もっと早く言えよと、心の中で魔王に罵声を浴びせていた。
心の中だけなのは、実際に罵倒して魔王様の機嫌を損なったら事だよね、という俺達の状況把握能力の高さによる結果だろう。
「あ、じゃあ、俺も!俺もやって下さい。すごいカッコイイ!俺も銀ピカの男になりたい!」
「じゃあ、フェールも剣を。」
フェールはわかりやすく、あ、という顔をした。
「君も自分の剣を適当に放っているのか。一応剣騎士の対面は整えてるんだし、君は勇者を目指しているんだろ。何をやっているの。」
フェールは俺の言葉によって見るからに真っ赤になった。
「はっは。お前は勇者を目指していたのか。そうだな、伝説の勇者は白魔法も黒魔法も使える剣騎士だもんな。そうか、そうか。お前はカイユーよりも夢見がちな可愛いガキだったんだな。」
本気で使用後とよくわかる朗らかな雰囲気となった男は、物凄く嬉しそうに部下を揶揄いながらようやく立ち上がり、監禁小屋に置いてあった自分の装備を身につけ始めた。
本来銃騎士でしかない彼が楔帷子の一部に見える程に大量の小型ナイフまでも用意していたことに、彼のアールへの謀殺の本気度が分かって俺は彼にウンザリとするぐらいだ。
アール謀殺には経験値稼ぎもしっかり見込んでいたという、ただでは転ばない男の嫌になるほどの本気度だ。
「フェール。ナイフの一本も持っていないのか?俺のナイフではどうだ?ああ!勇者任命式って奴は何を使えばいいんだろう!」
「団長ったら!いいです!俺はこれから剣を取りに走ります!」
「いやいいよ。」
「ダグド様!酷い!俺には竜騎士任命無しですか!」
「違う。君の剣も教会からの支給でしょう。使い慣れたものを手放すのは嫌だろうけどね、俺が新しい剣を作る。その剣で団員全員任命式をやってしまおう。」
「ええ!フェールだけ剣の支給ですか!」
散々俺から新たな武器を支給されてきたはずの男が喚いた。
俺は奴を放り出しておくべきだったのでは無いだろうか。
そんな俺に絶対に放り出させないようにする、これは奴の壮大なる前振りで、俺はまんまと奴に嵌められたのでは無いだろうか。
いつものようにアルバートルを放り出してやりたいと考え始めた自分に、俺こそ黒い靄の悪意に飲まれてびくびくとしていたのではないかと思い始めた。
俺こそ彼らに命令して、散々に人殺しをしてきたではないか、と。
「シロロ。もしかして、俺にも悪意はついているのか?」
シロロは俺に振り返らずに軽く答えた。
「つくわけありません!僕達は親子の名乗りをあげましたので、ダグド様は僕のお父様として属性変化しています!」
俺の領地の色が銀白色(シロロ色)なのはそういうことか!




