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転生先が物語分岐の中ボスという微妙な立ち位置だった  作者: 蔵前
ダグドと乙女と押しかけ騎士団
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俺と乙女と騎士と……①

 勝手なブリーディングを計画してしまったせいで自宅から俺は追い出され、なぜか俺の手下になったらしき騎士六人と、自宅前の玄関で開かない門扉を眺めるという間抜けな状態が一時間ほど続いていた。


 図体のデカい男達七人が円陣を組んで胡坐をかいている、という図はかなり哀れな姿だと思うが、門の見張り台で俺を見下ろす俺の乙女達は全く俺に同情を寄せる気配が無かったのだから仕方が無い。

 追い出されて身の置き所のなくなった寂しがり屋の俺は、手持ち無沙汰に騎士達に話しかけて親交を試みるしかなかったのだ。


 どいつもこいつも無駄に気さくなのは、二十代でありながら聖騎士にまで出世できた奴らの処世術ともいえるのだろうが、無駄にこいつらの外見が良すぎるのはどういうことだ。

 中世な剣時代の騎士で腕に自慢のある奴らだったら、もっと筋肉質でゴリラでは無いのか?

 いや、きっと教会の聖騎士選抜願書には、どこぞの歌劇団のように容姿端麗が必須要項になっているのかもしれない。


 人間とはそういうものだ。


 さて、俺のエレノーラの兄だという団長のアルバートルは、プラチナブロンドの無造作な短髪がよく映える小麦色の肌に、まるで海のような青い瞳が輝いている。

 エレノーラと彼は同じ色合いによく似た二人であるというのに、エレノーラが青い空とひまわりを想像してしまうのとは違い、アルバートルは夏の青い海そのものだ。


 しかしながら、エレノーラの外見を俺が女神だと思うように、アルバートルの体つきや顔立ちなどは、魔法で姿を作っている俺よりも完璧で神様のようなのである。

 いや、神様を模して造られた石膏像か大理石像そのものだ。

 ああ、だから、奴の名前は石膏アルバートルなのかな?


 そして、アルバートルの隣に静かに控える男は副官らしいが、名前が笑えるイヴォアールだ。

 象牙、とは何だ?

 しかし、褐色の肌のイヴォアールは横に三つ編みにした長い灰色の髪にアイスグレーの瞳という、月夜の砂漠が似合いそうな静かな外見をしているからか、真夏の太陽のようなアルバートルと並ばせると陰と陽で本気で映える。


 眩しいくらいだ。


 いや、眩しいのは、ティターヌという男こそかもしれない。


 彼は一番図体がデカく感じるのだが、それはウエーブの掛かった腰まである豊かで長い金髪が体を覆っているからであろう。

 髪の色は金髪と言ってもくすんでいるが、それは酸化しかけた金属のようであり、瞳の色も金属の輝きを秘めた様な黄褐色だ。


 また、女性的ではない顔立ちながら、大体の女性よりも美しく見える彼は目立ちたい時には自分を輝かせ、そうでないときは存在さえも不確かになる程の静かさという不気味な奴でもある。

 まるで金属を燃やした時にちかちかと輝く様な炎色反応のような存在感。

 そうか、それが金色だから、彼はチタンという名なのか。


「――それで、俺っちは目の前で妹を連れていかれてしまったのです。」


 仲良くなれば生い立ち話へと進むのがこの世の定めだ。


 騎士団長のアルバートルがエレノーラを奪われた話をするや、部下であるイヴォアールもそれに続いて家族が生贄用に売られたと言い出した。

 彼の話に俺の乙女にも生贄として売られた子がいると涙ぐみそうになると、すかさずティターヌが家族で逃げるところで家族全員が村民になぶり殺しにされてしまったなどと追い打ちをかけて来たのだ。


 俺は罪悪感でとてもいたたまれなくなっていた。

 そこで更なる追い込みをかけて来たのが、フェールという名の一番年下風の男だ。

 彼を見ているとなんだか懐かしいと感じるのは、黒い髪に黒い瞳、そして、黄色みを帯びた肌色という組み合わせが日本の男子高生を彷彿とさせるからであろう。

 この世界で美容院作風のスパイラルショートといえる髪形の男を見れるとはと、俺はある意味感動もしていた。

 彼の黒い髪が鉄に纏わせた黒錆びみたいだから、彼の名前がフェールなのかな。


 しかし、俺の前世な今風な髪形の彼でありながら、語り口は、なんというか日本昔話風だった。


 お陰で冷静になった俺は、本当は嘘話で他の奴らの真似をしているのだろう、と突っ込みを入れてやりたい気持ちになっていた。

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