何がしたいのかな?
園芸鋏を持った姿は幼い俺の背筋を凍らせた映画を思い出させる嫌なものでもあるが、それが少し懐かしいと喜んでいる自分もいるという複雑な感情を俺の中に渦巻かせた。
「君は何をやっているの?」
「こわい?」
「すごく怖いよ。」
嘘じゃなく本気で。
意味わかんなすぎて、マジ怖いよ。
彼は俺の答えに嬉しそうにふふっと笑った。
「それならば、僕はフェールを怖がらせられますね。」
「どうしてフェールを怖がらせたいの?」
「だって、フェールが言うのです。この世で自分は魔王の存在が凄く怖かったのに、僕という可愛い子だったから怖くなくなって心に穴が空いちゃったって。それを塞ぐ怖さが欲しいって呟くのだもの。」
俺とアルバートルは互いに顔を見合わせて、そして、凄く嫌な気持ちになりながら俺はシロロに先を促せた。
「フェールは他に何が怖いって言っていた?」
「僕がダグド様から貰ったゲーム機が怖いって。見たいって言っていたけど、ここで監視しているのは内緒でしょう。だから、他の怖いものを見せてフェールの心の穴を塞いであげようかなって。」
フェールのそれは饅頭怖いでしかないな。
俺は俺との約束を守っているシロロの頭を撫でて、姑息な技を使ってきたフェールへの仕返しにシロロを煽ることにした。
「それで散々にフェールを脅えさせてやれ。」
「うわ!ひどいですよ!ダグド様は!」
俺はシロロの頭に手を乗せたままぎゅうっと目を瞑り、カイユーがフェールを連れて帰ってきたアルバートルの気持ちを手に取るように理解させられていた。
畜生、放り出してしまいたい。
「――どうやって入ってきたの。」
「え、普通に入り口からですよ。」
「鍵は閉めてあったよね。どうして無断で入ってくるの。」
フェールはただでさえ高校生のような外見のくせに、純な高校男児の顔つきにして俺を見返して傷ついたようなそぶりをした。
「ひどい。俺っちは寒さで死にそうだから、公衆浴場の中であったまろうと考えただけなのに。ぜんぜん知らなくて入って来ただけの可愛そうな俺っちに、外に出てこのまま寒さと空腹で死ねというのですか!」
そしてフェールは言うだけ言うと、俺の返答も待たずにシロロ専用機の電源を入れ、当たり前のようにゲームをし始めた。
「ああ、フェールったら。それ僕のゲーム機です!」
「うん。一緒にやろう!」
「はい!」
当たり前のようにフェールとシロロはテニスゲームをし始めた。
俺はなんてものをこの世界に生み出してしまったのだと後悔に頭をぐるぐると回すしかなかったが、そのせいでノーラとアールが自分達の夕食を作っている情景をぼんやりと眺めているだけのカイユーの姿が俺の目に入ってしまった。




