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アルバートルの底力

「君の底力は奴隷の酷使か。」


「団員はそのためにいるのです。」


 アルバートルの返事は内容は人でなしだが、声の調子では上の空のような感じだった。

 確かに、今は監視仕事が一番大事だ。

 俺は雪の中で露天風呂の塀を直させられているカイユーとフェールに対して、いつもは抱かない憐みを抱きながらも監視モニターに意識を戻した。


 ノーラとアールは朝食の後にはまるで熟年夫婦のような有様で、ノーラはアールの服に刺繍をし始め、アールはそんなノーラに目を細めながら自分の国の書類仕事をし始める、という有様だ。


「畜生。俺とエレノーラにもこんな時間が偶には欲しいよ。」


 アルバートルの返事が無いと横を見れば、アルバートルはシロロとテニスゲームをして遊んでいた。

 アルバートルの監視用ヘッドフォンが、何時の間にやらシロロのヘッドフォンと同じにゲームモニター機に繋げられていたようだ。


 ここにテレビゲーム機があるというのには大事な訳がある。


 アールの魔法検索除けにはシロロを俺達の傍に置いておく必要があるのだが、外遊びが大好きな子供を一か所に押さえつけておくのは至難の業だ。

 そこで、俺は過去に作っていた簡単な電算機にブロック崩しとテニスゲームをプログラムし、やはり過去に作っていたモニターに繋げてシロロ専用機として彼に与えたのである。


 実際、男と女の会話を子供に聞かせたくない事もあり、俺達が監視している内容をシロロが知りたがらないように、シロロにも監視している格好をさせる必要もあったのだ。


 目論見は想像以上に効果があり、シロロは初めてのテレビゲームに夢中どころでなく、猿の一つ覚えのように、延々と、繰り返し、何度も何度もプレイをし続けている。


「失敗だぜ。大きいお兄さんの方がゲームに嵌っていやがった。」


 スコアタイムを見ればシロロとアルバートルのラリーは数分前どころではなく、ノーラ達を監視していたのが俺一人だったと思い知らされた。

 ってゆうか、玉が見えない程のスピードになってるじゃないか!


「ひどい団長だな。部下を雪の中で酷使して、君は温かい部屋でゲーム三昧か。」


 俺の罵倒でアルバートルはボールを打ち返しそびれて彼が操作していた右側画面には負けの文字が現れ、シロロ側には勝利の文字が現れてのゲーム終了だ。

 すると、シロロは立ち上がり、きゃっほうと腰を振って踊り始めた。


 っで、シロロが消えた。


「え、ちょっと、シロロ!待って!」


 殺気の籠った大きな舌打ちが俺を襲った。


「全く。シロロ様をここに縛り付けるために、俺がこんなにも頑張っていたのに。台無しですよ、ああ、台無し。」


「白目が真っ赤な君に非難されても、痛くもかゆくもないね。」


「連続乱れ撃ち!」


「鉄壁のぼうぎょ!」


「雪だるまん召喚!」


「シロちゃん!それ駄目!ただの雪玉にして!」


 俺は塀を修理している筈の露天風呂の方に首を向け、三者三様の叫び声をあげた三人の見えなくとも手に取るようにわかる様子に大きく溜息をついた。

 それからアルバートルの横に座り直すと、監視用ヘッドフォンを再び耳につけ直した。


「すごいなぁ、君の底力。残っていた塀もあいつらに全部壊されちゃうかな。」


「ハハハ、ダグド様だって分っていて俺に喧嘩を吹っ掛けたのでしょう。」


「そんな訳無いだろ。ああ、って、君も聞いてくれ。ノーラの様子がおかしい。」

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