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君の真意に頷いてなどやるものか

「結局、女は無し。

 死体を村に入れるなと俺が村民に罵られて散々な目に遭っただけですよ。

 イヴォアールは医者になりたかったとかで、病人怪我人を見つけるとお医者さんごっこがしたくなる面倒な奴なんですよ。


 ……それで、相棒は夫婦だって言うものじゃないですか。

 俺は女房の言うがままに、自分が泊まれない宿代を払う羽目になりましたよ。

 それで身も凍るような吹雪きの中、ガキとイヴォアールが悠々と寝ているだろう事にほぞをかみながら、たった一人で死体搬送の旅をする事になったのです。」


 アルバートルは、ああ疲れた、と言って首を回した。


「あいつを助けたのはイヴォアールなんだから、団長団長って、俺を頼るんじゃないって。

 そう思いませんか?

 拾ったんだから、イヴォアールこそあのちびの面倒を見りゃいいのに、ぜーんぶ俺に任せたんですよ。

 生き方を教えてあげてくださいってね、俺にガキを押し付けたのですよ。


 ええ、教えてやりましたよ。

 読み書きに、戦い方。


 ははは、あいつは俺の命令でいかようにも動く立派な兵隊に育ちましたよ。

 そこでまたイヴォアール様から俺はお叱りも受けた。


 ああ、イヴォアールは女々しすぎる。

 あいつは俺がディーンの死をずっと悼んでいると思っているのですよ。

 ダグド様、あいつはあなたと似ていますよ、きっと。」


 女々しい奴と似ていると言われて腹を立てるところだろうが、俺は全くと言っていい程アルバートルに腹が立たなかった。

 一度は婚約破棄を言い出したカイユーが、俺にノーラとの婚約を再び願いに来た時の姿を思い出したからである。


 軍服をきちっと着込んで現れた彼はパリッとしており、俺は彼のその姿にノーラが惚れた彼の本当の姿を見た様な気もした。

 だが、俺の許しを得た途端に、彼は自分の前髪を指さして、いつものようにお気楽そうにきゃはっと笑った。


「これ、この前髪、団長がしてくれました。格好が決まれば自信が持てるもんだって。本当にそうですよ!どうですか?格好いいでしょう。」


「うん。すごく格好いいよぅ。」


 俺は脱力しながらカイユーを褒めてやったのだった。


「エレノーラと君はやっぱり兄妹だよ。あいつも俺が拾った子供や老人を引き受けて面倒を見て来たからね。俺の世界がエレノーラで出来ているのはそういうことだ。君が団員の要であるのと一緒だよ。」


 違う、とアルバートルは呟いた。

 割合と大きな声で。

 俺は何が違うのかと彼をまじまじ見つめると、彼は俺に肩をすくめて見せた。


「ここはあなたがイヴォアールを見直して、今後はイヴォアールいじめを控えようかって考えるところでしょうよ。あなたにあいつが虐められる度に、あいつを慰めて元気づけるのに俺は飽き飽きなんですよ。」


 俺は笑ってやった。

 俺は笑って、アルバートルの考えているだろう事を流してしまいたかった。


 彼がわざわざ昔話をして見せたのは、彼の剣はノーラではなくコポポル王を殺すためのものであり、殺害をしたならばその咎を背負って出ていきますよって覚悟なのかもしれないと。


 俺はそろそろ一抜けしたいのですよ、ダグド様に任せてよろしいですか。

 

 そんな前振りを彼がしているのではないかと思ったからだ。


 けれども、俺は絶対に彼を出て行かせない覚悟だ。

 そのことで彼に釘を刺そうと口を開こうとしたところ、はしゃいだ男の声が監視小屋のすぐそこで起きた。


「わぁ、ダグド領で壊れた家だ!」


 アールの大声で、俺達は彼にバレていたのではと、一瞬で凍ってしまっていた。

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