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コポポル国の王の来訪

ここまでのあらすじ

俺、子供が出来ちゃったよ。

で、シロロ様は死体から生物を作り出せる能力をお持ちでした。

人間のエレに竜の子供が出来たからと心配している俺に、エレは大丈夫だと微笑んだ。

「シロちゃんが大丈夫って言っているから大丈夫よ。」

だからさ、死んでも作り直せますって奴の大丈夫は怖いって話でしょうよ!(by ダグド)

 俺は妻の妊娠を知ってから、この世における全ての幸運について考えていた。


 妻が妊娠して幸運だと喜んでいる訳ではない。

 竜と人間という組み合わせで、人間である妻が無事に子供を産む幸運をどうやって手に入れるべきなのか、という単なる不安を鬱々と考えていただけである。


 そして、笑う門には福来る、という言葉通り、俺が笑えなかったがために俺の領地には問題が持ち上がった。


 ノーラの婚約に関する事だ。


 以前にノーラに求婚した男がおり、それが我がダグドの親交国であるコポポルの王様だという所が問題だ。

 コポポルの王は永遠の命を持つ妖精でもあるのだ。

 そんな妖精がノーラに惚れてお互いに友情を誓い合ったらしいのだが、その行為によって問題が起きたのだと俺に陳情してきたのである。


「コポポルの誓いがノーラの身に呪印を結んでしまいました。」


 意味が分からないと、俺はコポポル国の国王様を唖然と見つめるしかできない。


 俺に見つめられた長く生きているらしい妖精は、外見は浅黒い肌に黒髪に黒い瞳という、三十代にしか見えない若々しい美丈夫である。

 我が領地にいる彼の父、コポポルの前王アスランなど丸顔の亀のような外見の爺さんでしかなく、本当に血が繋がっているのかと疑う程だ。


 しかし、人間のように年を取るがいい加減になると若返る、という非常識な妖精でもあるので、きっとこの目の前の若い男もあと数十年すれば老けた亀になるのかもしれない。

 とりあえず外見だけはそこいらの女性の心を掴むほどの魅力を持ったコポポル王、アール・アスラン・アールは、一体どんな問題が起きているのか分っていない俺に、申し訳ありませんと頭を下げた。


「あのさ、呪印って何?」


「結婚と同じような約束の印です。」


「はい?」


 コポポルという国は砂漠の国であるために農地も殆どなく、よって自給自足が適わないので外国から食料を輸入しなければならない。

 そこで、女が国に残って絨毯を織り、男がその絨毯を外国に売りに行くということで外貨を稼いで成り立っている国である。


「離れ離れの夫婦が交信しあえる聖なる印です。国を離れた男が妻の下に戻れるように、彼女を自分の妻だと他の男に主張できるように、印は女性の右手首にだけ現れます。」


「それがノーラの右手首にあると。え、でも、ノーラが君の領地に行ったのは七月の半ばぐらいでしたよね。ええと、通商の奴らの会議にノーラが出席して、それで君が我が領土に来ての、そのお返しのコポポル国へのご招待だったよね。」


「ええ。最初の訪問はそうですが、あなたの結婚前にもいらしています。父が絨毯を買い付けに帰国してきた時の付き添いで。」


「ああ、そうだったんだ。では、誓いはその時に?」


「ええ。あの、ご存じの通り、彼女は物凄い大怪我を負ってしまいましたので、その時に私は彼女の手を握って強く神に祈ってしまいました。恐らくその時だと思います。ああ、彼女はもう少しでこの世を去るところだったのです。」


「え?」


 俺が初めて聞いた話だ。


 そして、初めて聞いた話に背中がぞくりと、いや、血の気が引いたのだ。

 温かい部屋において、俺は体温がどんどんと下がっていくようだ。


 俺がアールを招いて話し合っている部屋は、いつもの見張り台の会議室ではなく大きなソファのあるラウンジの方だ。

 ウールの毛足の長い絨毯が広いフロアに敷き詰められて、その中心に足のない大きなL字型のソファと長方形のテーブル、そしてL字型ソファの体面になるようにクッションのようなスツールがいくつか置いてある。


 ここにモニターとステレオがあればパーティ用のカラオケルームとなるだろう。


 俺とアールはL字型ソファで斜め対面で座っているが、俺の後ろにはアルバートルが彫像のように立っていた。

 俺は信用している筈のアルバートルを見返して、彼が静かな瞳で俺を見返して来たことで、彼は知っており、彼こそ俺から真実を隠しきったのだと知った。


 つまり、裏切りがあったという事だ。


「それで、ですね。」


 俺の内心を知らないアールによると、呪印の解消を行うには、呪印の誓いをした男と女が二日間一緒に過ごして心が無い事を確認する事なのだという事だ。


「私は三日しか滞在できませんが、その間の二日間はノーラと一緒に過ごさせてください。」


 申し訳ありませんと愁傷な顔をした男にしては、提案が図々しいと思いながらも俺はアールに許可を与えていた。


「いいでしょう。二日間の試練を認めます。ただし、ノーラがあなたの話を了承したら、ですね。いいですか?」

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