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百戦錬磨よりも怖い無垢②

 四人の女性がアルバートルの全裸を目にして、だかしかし、顔を真っ赤にしていたのはノーラだけだった。

 そういえば、叫び声もノーラのものだけだ。

 そして、四人の中で当たり前だが最初にエレノーラが動いた。


「に、兄さん。あなたはどうして真っ裸なの?」


 アルバートルは照れるどころか完全にエレノーラ達に正面を見せ、それどころか腕組みをして肩幅に足を開いているという堂々とした立ち姿を披露している。


 どんな戦況でも結果を出す男だが、今は止めてと俺は叫びたい。

 そんな俺の気も知らずに彼は平然と妹に答えた。


「単なる処女判定だよ。狼狽していても、お前が以前のように顔を赤らめないことで、男の体に見慣れちゃったんだねぇと兄さんは安心したよ。ちゃあんと夫婦生活があるんだなって。」


「お前は何を嫌な判定をしているんだ。」


 俺こそ顔が真っ赤になってしまったじゃないか。


「いや、だって、心配でしょう。あんなに初夜を心配していたダグド様がその後の報告が俺に無いのですからね。もしかしてって、俺は悩み通しですよ。」


 こいつは俺に出て行けと早く言って欲しいのだなと気が付いたが、彼の言い分では顔を赤らめなかったリリアナとアリッサが経験ありというか、男性の裸に耐性があるという事になると気が付いて俺はパニックになってしまった。


 うそ。


 リリアナは二十四歳だとしても、アリッサはまだ十七歳だぞ。

 俺が市になんて行かせたからか。


「何を言うんだ!アリッサは驚きすぎて顔がまっしろになっちゃっただけなんだ。そうだろ、アリッサ!」


 ピンクブロンドをさらっと後ろに流した彼女は、ふふっと女王様のように俺に対して微笑んだ


「いいえ、経験は無いですけれど見慣れているので平気です。どうだ!って私の目の前で服をはだける男って多くいるの。うふふ。銅銭にも値しないわねって言うと、大体がすごすごと逃げていきますけれどね。」


 俺は八歳でダグド領にアリッサは来たんだったと、その理由が、名士の娘の身代わりになることで自分のいた孤児院に多大な寄付をさせるためだったと思い出し、経験がないアリッサよりも経験がある十七歳の方が可愛らしいのではないだろうかと、自分の白髪が増えた様な気がした。

 ついこの間、シロロに異界流しにされて大泣きしたアリッサは、あれはあの時だけのお子様だったのだろうか。


 あ、あのアルバートルがもそもそと下着を着だしているではないか!


「ちょっとアリッサ。悲鳴を上げて俺の腕の中に来て。俺の娘はあどけない少女なんだと俺に夢を見せてくれ。」


「もう、ダグド様って。もう。きゃああ。」


 俺の腕の中にアリッサは来たが、どうしよう、俺は彼女が可愛い女の子であるという夢を見ることは出来なかった。

 彼女を抱きしめながら、俺はもう一人のリリアナに望みをかけていた。


「リリアナもおいで。君も驚きすぎたのでしょう。」


 蜂蜜色に輝く金髪に菫色の瞳をしたおっとりとした美女は、俺の娘の中では一番ふっくらしているが、それは太っているからではなく、誰よりも女性らしいラインを持っているだけである。

 世の男性諸君には恵の肢体としか映らない、彼女は絶世の美女でもあるのだ。


 彼女はアリッサと違ってダグド領の外に出たことのない女性なので、アリッサのように露出狂の男性の被害に遭った事は無いのは確実で、だからこそ、驚きのあまり悲鳴も上げられなかったのだろうと俺は自分に言い聞かせた。


「ダグド様に抱きしめられるのは嬉しいから喜んで。でもね、私は子供の先生をやっているでしょう。粗相をしてしまった子供の着替えを手伝ったりはよくありますもの。裸ん坊を見たくらいで、今更驚きません事よ。」


 俺はアルバートルを振り返り、彼とティターヌが違う出口から自分の個室へと戻って行ってしまった事を知った。


 俺はエレノーラとノーラにも手招きをした。


「お願い。俺の娘は無垢で可愛いだけって欺瞞に陥らせてくれる?現実から少しだけ逃避したい。」

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