表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先が物語分岐の中ボスという微妙な立ち位置だった  作者: 蔵前
獣はネオテニー化するべきか
133/335

赤ん坊によって引き起こされた俺の境遇

 赤ん坊は残念なことに、俺によって俺達の手を離れた。


 当たり前だろう。


 ビクトールとブリューの生まれてすぐに殺された子供の魂を、シロロの手によってビクトールの遺体から粘土のようにこねて作り上げられた赤ん坊の身体に入れ込んだというものだったのだから。


「君は大事な子供の為にどこまで出来る?」


 ビクトールは魔王の唆しに乗せられ、そして、死んだ子供の復活のためにとあの業火の中に飛び込んだのだ。


「お父様ってすごいものですね。自分の命を子供の為に捧げられるなんて。あぁ、僕もダグド様の大事な子供だ。ふふ。ダグド様は僕の為に死んでしまうかもしれないのですね。あぁ、なんて素晴らしいのでしょう。」


 シロロは恍惚とした顔で俺に報告したが、死んだ後にシロロに死体をこねくり回されるのであれば、絶対に死ぬものかと、俺は誓いを新たにしただけだ。

 エレノーラが死んでも死なないし、俺が彼女を俺に殺させない。

 ティターヌが提案した、「やらない」という後ろ向き戦術だって使ってやる。


 ピンクの竜だって構うものか!


 さて、ビクトールという男性から作られた赤ん坊二人が女の子であるのも不思議だが、俺の前世の世界でもアダムの肋骨を使ってイブが作られたという神話があるのだからおかしな話では無いであろう。

 そして、ただでさえ雌が不足している狼族は天からの贈り物だとその子供達を欲しがり、ビクトールの姉は弟のよすがだからと自分が母となると宣言した。


 その上、赤ん坊を手渡さねばダグド領を襲うとまで言い切ったのだ。


 たった数時間の世話で赤ん坊という存在にノックアウトされたエレノーラが、女は子供を産む機械ではない、と叫んでミゼットと死闘を繰り広げかけたが、俺は狼族に赤ん坊を手渡した。


 俺は裏切り者とエレノーラに責め立てられ、また、彼女の完全手下軍団でもある乙女隊からも見捨てられて、夕飯を抜きにされてしまった。

 アルバートル達の基地に行けばシロロを囲んでのパジャマパーティを開催中だったので、君子危うきに近寄らずということで、寄る辺の無くなった俺はデレクの家のドアを叩いた。


「あ、ダグド様。」

「あぁ、デレク。遅くにすまないね。アスランは目覚めたかな。」

 デレクは大きく肩を竦めた。

 その動作に、昏睡状態もアスランの演技だったのかと、完全にアスランに踊らされていただけの様だと俺は大きく溜息を吐いた。

「爺は、起きているかな。」

 俺は一歩デレク家の敷居をまたいだが、デレクの両手によってそれ以上の侵入を阻まれた。


「デレク?」


「すいません。妻に突然の客は断るように言われていまして。時間も時間じゃ無いですか!」

 びくびくとした脅え顔をデレクは俺に見せ、だが、全裸にガウンを纏っただけのようなデレクの姿に気が付き、俺は大きく舌打ちをした。

「このどすけべぇが!妻のベッドに今すぐ戻りたいだけだろうが!」

「す、すけべぇって。結婚した夫婦が何をしていたっていいでしょうよ!この、ピンクな悪竜が!」

 真っ赤になったデレクは久しぶりに俺に悪態をつくと、俺の目の前で玄関のドアをバタンと閉めた。


 俺はとぼとぼと真っ暗で領民の誰もがいない広場に歩いていき、そこでぶらぶらと一人ぼっちで歩いているアルバートルを見かけた。

 彼が着ているのは俺が作った軍服でも普段着でもなく、エレノーラが俺から盗んだ俺の砂色のツナギである。

 彼は広場から真っ直ぐに俺の城へとむかうと、結界が張ってある俺の城の中へと姿を消した。


 俺は彼が向かう先、この領土の心臓部となるボイラ室へと先回りした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ