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破壊竜ダグド

 竜になって思うのは、竜とは本来は自然そのもののエネルギーが具現化しただけでは無いのかという事だ。


 真っ黒で金属の光沢のある硬い鱗が俺の全身を覆っていても、俺には空気の流れや風の爽やかさまで体の隅々まで感じることができる。


 太陽の温かい光は俺の大きすぎる体を温め、真っ白い靄は上空に昇りつめた俺の大きな目玉や喉を潤してくれる。


 俺はこのままこの上空に留まりたいと願い、俺の意識までも遠のき始めた。


「アルバートル、行け!俺はもう一生走れやしない!」

「バカ野郎!俺が走れる限りお前は走れるんだよ!畜生、ダグド様!」

「頼む!行ってくれ!ダグド様!こいつが走れるように俺を燃やしてくれ!」


 俺を引き戻したのはイヴォアールとアルバートルの必死の声だ。


 彼らは足を止めていた。

 瘡鬼の術の一つである寄生樹に、イヴォアールの左足が貫かれてしまったのだ。

 補助魔法で強化している筈の身体を裂いたその樹は、金属を含んでいるような輝きも見せている尖ったものだ。

 そして、尖っているだけではなく捩れてもおり、それらがドリルのような回転をしながら地中から生えてくるのである。

 これではどんな防備をしていたとしても、大体のものは貫かれてしまうだろう。

 アルバートルは親友を貫いた寄生樹を切り裂き、歩けない親友を背中に乗せ上げようと腕を取り、イヴォアールはその手を振り払っているところだ。


「ダグド様!」

「俺に向かって炎を下さい!」

 親友の玉砕覚悟を知っているアルバートルの必死の俺への呼びかけであり、イヴォアールはこのまま死にたいとの願いを俺にぶつけたのだ。


 瘡鬼なんて小物に、俺の大事な二人を汚させてなるものか。


 俺の怒りはそのまま炎となって吐き出され、けれども、炎は途中で消え失せた。

 張り子の竜の俺では彼らに届く炎を吐き出せなかったのである。

 俺は自分の不甲斐なさに、怒りよりも嘆きの咆哮を上げた。


 オオオオオオオオオオォォォォォン。


「うわぁ。」

「ダグド様!」

 俺の咆哮は声だけではなくかなりの圧縮空気も含んでいたようで、アルバートル達がいたところの木々の葉どころか、彼らを囲んでいた瘡鬼たちさえも一気に舞い上がらせて散り散りに吹き飛ばした。

 アルバートルは咄嗟に出した大砲の重量で吹き飛ばされる事から逃れ、そして、アルバートルに掴まれて飛ばされる事の無かったイヴォアールは、自死の決意までも吹き飛ばされたような呆け顔をしていた。


「アルバートル!イヴォが馬鹿なことを考える前に今すぐ奴を担いで走れ!」

「ハハハ。確かに。」


 アルバートルは笑いながら親友を無理矢理背負うと、彼の眼が見えているエランが接岸するあろう予定地向かって走り出した。


 さぁ急げ。

 お前たちのすぐ後ろに、俺の眼には見通せない禍々しいものが迫っている。

 あれは一体なんだろう。

 この陰鬱な西の森に住まうという主なのだろうか。

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