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自分なりに生きようか

 モニークは何度も機体を振り返って、壊れてしまった飛行機は自分のせいだと何度目かの涙にくれた。


「あぁ、あたしがぐずぐずしていたから。でも、あたしはこの子を絶対に手放せない。でも、好きになった彼の事も。あぁ、どっちつかずって卑怯だもの、どっちも選ばなかったから、これはその罰なんだわ。」


 俺はしまったと思った。


 しばらくモニークと交信していなかったため、モニークが通話が完全に切れていると勘違いしているのだ。

 とりあえず、彼女の言葉をアルバートル達やティターヌには聞こえないようにすぐに遮断はし、だが、俺は覆面マスクのイヴォアールの口元がにやけたところを見逃していない。


 しまった。


 選手交代させるか?


 いや、イヴォアールからマスクを剥がさず、事務的な対応しかさせないという試練を与えたらどうだろう。

 もともとそのように命令してあったのだし、この機会に、モニークに失ったどちらかを選ばせるという試練はどうだろう。


「俺はどっちつかずでも、君が俺の事を好きでいてくれたらそれでいいから。」


 黒竜号の轟音でアルバートルとエランには聞こえなかっただろうが、俺にはイヴォアールの呟きは聞こえ、俺が聞こえるのならば統括担当者にも俺が聞こえた声は聞こえている。


「ティターヌ、内緒にしとけよ。」


「ふふ。あの冷徹副官だった彼がこんなにも壊れるとは、モニークさんの無邪気さは怖いですね。いや、あなたの育てたお嬢さん達はみんな世間知らずのとてもいい子ばかりだ。危なっかしくて領地からは絶対に出せない幼さもある。」


「君は辛らつだね。」


「おや、皮肉でも悪口でも無いですよ。俺達は汚い事を多く見てきましたからね、守れるものが出来て嬉しいのですよ。頑張って守って来た教会があんな薄汚れた、だったでしょう。だから尚更、ここが天国みたいに思えるのです。」


「シロロも天国だって言っていた。エレノーラが誘拐された時には、僕が災厄を運んできたせいだって泣いたね。それが今や、悪さばっかりの悪ガキだ。君も自分を出して良いと思うよ。」


 ティターヌは金色の自分の長い髪を結い直すと席を立ちあがり、俺の飲んだコーヒーのカップを下げながら俺の頬にそっとキスをした。

 そこいらの美女よりも美しく金色に輝くティターヌは、初対面では下品な物言いと安っぽさを売り物にしていたが、今や、どこに存在しているのかわからない程に静かで地味な男になっている。

 エレノーラが言うには、彼は女性に敢えて下品な物言いをして遠ざけているふしがあるという事だ。


 凄いな、俺のエレノーラは何でもお見通しだ。


 俺は自分の行為の結果の行方を青ざめながらも見守る男を見返して、すまない、と答えた。


「俺は女の子の方が好きな竜なんだ。」


「そうですか、失恋ですね。」

「悪いね。」

「いえ。受け入れてくれたうえで断ってくれるのは嬉しいですね。チコリをもう一杯いかがですか?」

「ありがとう。貰うよ。」


「きゃあ!」


 俺達はモニークの叫び声にスクリーンに振り返り、その上俺は意識をモニークへと飛ばした。


 なんと、チワワサイズの小さな人型の大群が、モニークに長い槍を突き立てているのだ。

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