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乗り物大好き!

「でででん!これぞ、西の森対策に俺がコツコツ作り上げて来た空気浮揚艇、ホバークラフト黒竜号であーる。」


 俺は自信を持って地下水路に浮かぶ楕円形の船を指し示した。


 前方の操縦席のある側のシールドには竜騎士団のマークを赤地に黒でペイントし、後部には真っ黒にペイントされた大きなプロペラが二つ、膨らんだスカート部は真っ黒だが上部のシート部は彼らが大好きな赤を施してやったという、赤と黒で統一された団員が喜びそうな派手な外見だ。


 しかし、反応がめちゃ薄かった。


 いつもは俺の用意した乗り物に歓喜の声を出してくれるアルバートル隊の筈が、アルバートルは片眉をピクリと動かしただけの無表情で、彼に連れて来られた焦げ茶色の髪色に青緑色の宝石のような瞳を持つ青年などは死刑囚のような落ち込み具合だ。

 そして、褐色の肌に灰色の瞳と灰色の髪の毛という砂漠の国の王子のような外見のイヴォアールは、王子を落とされた奴隷のようにして、俺を恨めしそうな目で眇め見ていた。


 ジャングル捜索のためにと、いつもの竜騎士団の黒ずくめ制服ではなく、迷彩カラーのツナギを着せた事が気に入らないのであろうか。

 彼らは馬鹿みたいに俺の作った馬鹿派手な軍服を気に入っているのだ。


「こんなすぐに沈んでしまいそうな船って、ネタ切れですか?」


 銃騎士であるアルバートルにはもともとサーチスキルというスキルもあるが、それは、この世界で未知のものにはサーチ機能が全く働かないという欠点がある。


「うるせぇよ。乗った後に知って驚け。」


「……ダグド様、すいません。その平べったい形状は、俺のトラウマを呼び起こします。パスさせてください。」


 エランは青かった顔色からさらに血の気を失わせて、貴族的ともいえる端正な顔を平民以下になるほどに歪ませた。

 司祭見習いでもあったからか、誰にでも公平なエランはシロロの我儘にも優しく、シロロにいつでも遊んでくれるお兄さん認定されている。

 そのため、シロロの呼び出した怪獣に乗せられては酷い乗り物酔いで苦しんでいることが多い。

 彼の言うトラウマは、最初に乗せられた蛾の怪獣の事だろう。

 それによる乗り物酔いで、彼は数日寝込んだのだ。


「……克服しろ。」


「ダグド様は俺に死ねというのですね。」

 これはエランではなく、面倒くせぇイヴォアールだった。


「モニークに気に入られるいいチャンスだろ。手を出したら殺すが、イメージ底上げは頑張ってこい。」

「嫌われる後押しになりそうですよ。最近は避けられる。」


 確かにモニークは最近イヴォアールを露骨に避けているのだが、俺が見るに、イヴォアールが彼女を見つめていない時には彼女の方が見つめているような場面も何度か見受けられるのである。


「友人としてでなく、魅力を振りまくのでもなく、今回は一切モニークとは事務的にだな、仕事として対応しろ。お得意の要人警護の実践だ。モニークにお前の仕事の時の姿を見せてやれ。いつもの腑抜けくんじゃないね。」


 彼は俺に片目を閉じると、ひと月ぶりに王子様のような魅力的な笑顔をみせた。


「はは。俺もダグド様がいれば何もいらないかも。」

「ば、馬鹿!いいから乗れ!一分一秒も無駄にするな!」


 アルバートルと彼に首根っこを掴まれている哀れな青年は船に乗り込まされ、イヴォアールもそれに続いた。


「よし、発進。」


 俺の掛け声とともに黒竜号は大きな咆哮をあげた。

 黒竜号はアルバートル達がこの世界で知っている船以上の速度と動きを伴って、彼ら青年達の驚きの叫び声も乗せて、俺の前の水路から一瞬で姿を消した。



「水門は既に全開だ。陸上もいける空を飛ぶ船なんだよ、諸君。」

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