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爺様

 コポポがぐるぐると命を回して再生を続ける妖精であるのが本当ならば、俺はアスランだった今の王、アールの要求を受け入れ続けねばならないというフラグに気が付いた。

 たとえ、俺が好きになったアスランそのものでは無くなっているのだしても、俺は親友のよすががそこにあるのだとアールを撥ね退けることは出来ないだろう。


 ブーブー。


 誰かがまたダグドの城門を通ったらしい。


 俺は大きく溜息を吐くと、生贄として領地を歩かされているだろう少女を確認するべくスクリーンに目をやった。

 城門が開いて、そこにぞろぞろと進むのは三人の旅人。

 それが、アスランとデレクとその妻、デズデモーナであるのだ。


「死んでいた、はずだろ?デレクもその女房も!」


 俺は驚きながらも会議室を飛び出して、秘密基地という見張り台を飛び出して、階段を降りるのも面倒だと飛び降りた。


「おここー。そんなに歓迎してくれるとは、嬉しいじょな。」


「アスランさん。あなたはアールになったのでは。」


「おここ。違いますのじゃ。わしはアスラン。ただのアスラン。そう言ったじゃろ。わしは後数年の命の爺じゃ。」


 ひゃっひゃっひゃと笑い出したアスランの歯は、全部が揃っているが以前ほどの若々しい白さが無いどころか、長生きをした人のように黄ばんだものと変わっていた。

 それこそが彼が言う通りに、彼がただの人間のように生きることを望んだ証拠なのだという事だと認めるしかない。


「そうですか。ですが、あと数年は許せませんね。もっとあなたには長生きをしてもらわねば。」


「おここー。嬉しい事をおっしゃるだぎゃにゃ。」


「すいません。僕達のせいで。」


 短い栗色の髪に水色の瞳のデレクは眼鏡を外しており、服装もコポポル人特有の絨毯のような模様のチュニックを生成りのズボンとシャツに合わせているという格好だった。

 しかし、通商云たらのあの制服姿よりも、彼にはとても似合っていた。


「この方は僕達に命と再生を与える為に、お持ちの長い再生の命を下さったのです。そして、僕は、あの僕達は家族の誓いを立てました。ダグド様、僕と妻と父親、この三人の移住を認めて下さりませんでしょうか。」


 俺は彼らに両腕を広げて、ようこそ、と大声で歓迎していた。



「聞いて!アルバートル!爺様が生きていたよ!」


アスラン一行をダグド領の迎賓館に取りあえず引き込むと、俺はこの喜びを伝えたいと会議室に飛び込んだ。

しかし、アルバートルはやっぱり不機嫌な面持ちのまま、俺にチラリと目線を寄こしただけであった。

いや、あからさまにちぃっと舌打ちをしたのだ。


「どうしたの?」


「いえ、何でもないです。」


「いや、何でもなくは無いでしょう。ここは君あっての領地だよ。そして、君は俺の友人じゃないのか?何かあるなら教えて欲しい。」


アルバートルは俺を真っ直ぐに見つめ、うわあ、俺の胸がどきんと鳴るような美貌を俺の心に残るぐらいに俺に向けたのだ。


「な、なんだい?」


しかし、彼は答えなかった。

軽く首を振ると、これでいいのでしょうね、と言った。


「これでいい?」


「俺達が死んでも、あなたにはアスランは残る。デミヒューマンが親友の方があなたの為だ。」


彼がすぐに会議室を出て行ってくれて助かった。

黒竜が泣き顔を晒す事はできないだろう、から。


ガチャっと音を立てて会議室の扉が開いた。


「追っかけてくださいよ!それで俺も親友だって言ってくださいよ!」


「台無し!君はすっごく台無し!」


けれど、俺から親友となった彼が失われてしまったその時、俺はどうなってしまうのだろう?

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