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戦勝しても敗北感だけ

 ザワークローゼン王国への俺の侵攻は問題になるどころか、通商云たらの威信に関わると判断したのか、かの国は砂漠嵐で壊滅したという事になった。


 だから、ザワークローゼン王国に盗まれたヘリコプターを通商に対してもう一回作れとはどういうことかと思うが、もう一回金を払ってくれるのならばと俺は仕方が無いと受けることにした。


 実はマホーレン様に作ったヘリが無傷で残っているのである。

 ははっ、俺って詐欺師。


 さて、俺の予想通り、俺達がダグド領に戻った翌日にコポポル王、アスランの崩御の連絡が俺のところにやって来た。

 俺は葬式に出られない身の上だからして、代理としてアルバートルとエレノーラに香典を持って弔問に行ってもらった。

 こういう時ばかりは、俺は自分の身動きの取れない身の上を恨めしく思う。


 そして、その数日後になる今日なのだが、俺は彼の葬式に出れなかった事で自分の中で彼の死の昇華が出来ないと、未だにもんもんとしていた。

 にろにろ姉妹が乙女隊の一人、蜂蜜色の髪を持つリリアナのパイプオルガンを気に入り、毎日決まった時間にはリリアナと一緒に過ごしてくれるようになったという喜ばしい出来事があったにも関わらずだ。


 しかし、アスランと戦友となったカイユーやフェールにもそうだったようだ。


 彼らは俺を会議室に呼び出すと、あの夜、彼らをアルバートルの元に帰してから何があったのかと、俺に説明を求めてきたのである。

 会議室には彼らだけではなく、プライベートルームのようにいつもいるアルバートル団長様は言うに及ばず、なぜか生気のないエランまでもいた。


「あの御仁はあんなにも元気であったでは無いですか!」


 まず、開口一番にフェールが会議室の机を叩いて声を荒げたが、俺も彼と同じように机を叩いて騒ぎたいぐらいである。


「ダグド様。俺達には言ってもしょうがないと思っていますか?」


「カイユー。君がそんな言い方をするのは珍しいね。そして、君の言った事は考え違いだよ。コポポル人はコポポという妖精か何かの血を引いている民族だったという事なんだってさ。」


 カイユーは俺にすいません、と言った。


「おい、どうした、カイユー!変なものでも食ったのか?お前はそんなキャラじゃなかったはずだろう。」


「ひどいっすよ!説明されてもわかんなかったから、結局俺に言う必要がないも一緒だったなって、すんませんって事ですよ。」


「そこが君らしくないって言っているんだ。わかんないよって言ってよ。そうしたら、俺も意味わかんないんだよって逆切れできるだろうが!」


「はい。」


 俺の口にはシロロが差し出したチョコレートらしきものが放り込まれた。


 終にエレノーラは板チョコらしきものをキャロブ豆によって作り出す事に成功し、シロロはそれが詰まっている小さな籠を独り占めして、時々人に配って歩いて優越感に浸っている。


 勿論、俺は叱りつけるよりも彼の頭を大きく撫でて可愛がっている。


 シロロが鼻をまげて一粒もくれなくなっても困るし、俺の優しきエレノーラに泣きついてエレノーラから貰うという手を俺は持っているからだ。


 しかし、今日の俺には、一粒だけでは心のささくれを癒せなかった。


「シロロ、もう一粒。」


「ダメです。エレノーラがダグド様は一日三粒までと言ってます。」


 これはエレノーラの仕込みだったのかと俺は理解し、魔王シロロが完全にエレノーラに攻略されている事にエレノーラへの敗北感だけを感じていた。


 ザワークローゼン王国の一夜など、俺には敗北感の方が大きいのだ。

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