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俺の真実とシロロの真実①

 風呂で茹ってしまったシロロを部屋に戻さずに、俺は彼を広間の方へと運んだ。

 飲食は広間でを徹底している手前、シロロを彼の自室で介抱したばかりに、部屋で飲み食いしても良いという間違った認識を今後の彼に植え付けたくないからだ。


 大学時代、純粋な興味から一般教養の選択で風俗学というものを選択したが、そこで知った中世ヨーロッパ人の衛生観念が現代の俺には受け入れ難過ぎるのである。


「あの、怒っていますか?」


 長椅子に転がせていたシロロが、俺に対して窺うような声を出した。


「え、あ、いいや。どうして。」


「あの、難しそうな顔をしていたから。」


「そうか?」


「はい。お風呂の時。あの、僕がやっぱり……。」


「あぁ、それはいいよ。君はもう俺を殺さないんでしょう。俺も君を殺さない。いいかな、レクトル、約束しよう。俺達は互いを裏切らないと。」


 シロロはこくりと頷いた。

 彼は俺に懐いているのだから、断る事など無いだろうという想定の上の台詞だ。

 誰にも愛されなかった子供に対して、拘束力のある真実の名前を唱えた上で約束をさせる俺はなんという卑怯者だろう。


 だがしかし、この世の平和には、俺が殺されないという事がとても大事なのだ。


「はい。絶対に裏切りませんとも。僕ではこの城を制御できませんから。僕はこのままずっとずっといい暮らしがしたい。」


「ははは。お前は本当に俺の死んだ(はずの)子供そっくりだな。」


 可愛がっていたモルモットは、寝て食っては可愛がれと騒ぐだけの生き物だった。

 シロロはそっくりだと彼の頭にポンと右手を乗せると、彼はうふふと笑って両手で俺の手を掴んでさらに自分の頭に押さえつけた。

 畜生。

 あざといぐらいコイツは可愛い。


「それで、この城の動力部分は何を原料として動いているのですか?薪ですか?」


 うわぁ、本気であざとい奴だった。

 俺から城の情報を引き出して、城主に成り上がるつもりだな。

 さすが、魔王に成長する予定の雛。


「薪じゃないよ。でもさ、薪だったら誰が薪を用意していると思っていたの。」


 俺は大人なので、質問には質問返しではぐらかす、という魔法も使える。


「え、えと。だって、ご飯も勝手に用意されているから。薪だって。」


「ご飯は召使の人達が用意しているんだよ。」


「え、いたのですか?僕は召使の人は一人も城で見ていませんよ。広間の棚の扉を開けると、温かい出来立てのご飯がいつも出てくるじゃないですか。今だってそこから僕の為の水差しとコップを取り出したじゃないですか。あなたの魔法じゃないのですか?」


 ものすっごく驚きましたと言う顔で俺を見上げたシロロは、真ん丸の真っ黒な目をキラキラとさせており、ロリだろうがペドだろうが、それこそノーマルな男の俺でさえドキンとさせる程の可愛らしさを発散していた。


「え、ええと、それはね!この、秘密の扉って、これはエレベーターなんだよ!」


「エレベーターって何ですか?」


 俺はいそいそと種明かしをするべく動いていた!

 可愛いってすごいな!

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