発端①
5/22 ゆっくりですが、これから全部の章を読みやすいように空白入れていきます。
6/18 登場人物の登場時の描写について素晴らしきアドバイスをいただいたので、アルバートル隊の登場時の彼らの外見などの描写を書き加えました。また、それに先立ち乙女隊の方も簡単ですが書き加えてあります。「生贄の娘達」でエレノーラ、「戦況は一瞬で変わる」で乙女隊、「俺と乙女と騎士と……」でアルバートル隊への加筆です。
やっぱりアルバートル隊は書くのが楽しいです。
11/1 一話が長すぎる所は分割していきます。
十五年ほど生きてきて、そこでようやく自分が何者か知ることがある。
自分探しの旅の結果では無い。
簡単なことだ。
突然目の前にコスプレ姿の三人の男女が現れ、中世風の広間で遅い昼飯に舌鼓を打っていた自分に対し、その中の剣を持った勇者風の男に叫ばれたからだ。
「お前がこの世を破滅に導く黒竜ダグドか!」
俺にできたのは、彼等に「え?」と応えるだけだった。
そうだ驚きだ。
驚きと共に俺の脳裏に前世の記憶が蘇ったのだから猶更だ。
黒竜ダグドって、俺が友人と作っていたゲームのキャラクターじゃないのかと。
友人の当初のシナリオでは、黒竜ダグドは中ボスで、倒される事で大爆破を引き起こし、つまり、ゲーム世界の半分を壊してしまう。
そして、勇者達はそこで死に、だが、新たに世界各地で転生をし、前世の記憶を持ちながら仲間を探しつつ本当の敵、彼等を操って人間世界の破滅を招いた魔王を倒す、という物語だった。
「途中でさ、悲劇的なイベントは必要でしょう。なんか、物語に深みを持たせるてきな。」
友人はそう言って笑ったが、俺は奴に冷静にダメ出しをするしかなかった。
「育てていたキャラがぱぁになったらさ、深みどころの話じゃ無くない?俺達が作っているのはネットゲームでしょ。」
「あ、そっか。最初に好きにキャラクターを製作させるんだものね。でもさぁ、善意しかない自分の行動で世界を壊したっていうイベントは欲しいんだよね。」
「じゃあさ、勇者達は死なずに数百年か数十年後の荒廃した未来に飛ばすのは?」
「あ、そっか。そん時に装備を一度封印して、そして新たな世界で新たな装備を買わせるのね。あ、レベルも少し下げるのもいいかな。その代りに新しいジョブも増やして。」
俺達は互いを抜け目がないろくでなしだと笑いあった。
けれどもこのゲームは日の目を見ることも無く、否、完成することも無かった筈なのだ。
なぜならば、その日のうちに俺が死んでしまったから。
人はあっけなく死ぬ。
車に撥ねられても痛みを感じる間もなく死ねたのは不幸中の幸いだろうが、俺は自宅で俺を待っていたであろう真っ白なモルモットの黒い瞳を思い出して、転生して初めての絶望に落とされた。
大食漢でウンコを製造するだけのあの生き物は、飼い主の俺が死んだがために、絶対に、きっと、確実に、餓死したであろうに違いないのだ。
「あぁ、シロロ。」
「どうして、僕の名前を呼んで泣くの!」
割り込んできた子供の声に、俺はえ?っと再び声を出してしまっていた。