9 月の神 リュナと星の神 オド
今回少し長いかもしれないです。
どうしよ、どうしよう。
魔物とかお化けだった場合戦わないといけない。リーンを呼ぶにもここからだと時間がかかるし、お祓いは使えないし、魔法も使えない、武器も持ってない。
俺が使える最大限の武器は今手に持っている木でできたコップくらい。お花に水をあげる訳じゃないんだから!!ダメじゃん!!!!
ワタワタ俺がしている内に、2つの影が近づいてもう目の前に来ている。
「ヒッ!!お化け」
「お化けじゃない。」
女の子らしき声が聞こえたので目をそっと開けて見てみるとそこには女の子と女の子より少し小さい男の子が立っていた。
女の子はクリーム色がかった銀髪で、腰くらいまであるサラサラストレートな長い髪の毛に綺麗な濃い藍色の瞳をしている。一言でいえば美少女だ。あと俺を睨んでいる。
男の子は金髪で少しクセがあるミディアムくらいの髪の毛に女の子と同じ濃い藍色の瞳をしていてこちらも美少年だ。でも、恥ずかしそうに女の子の後ろに隠れている。
「お化けなんて失礼。あなたは誰?ここで何をしているの?」
「俺は凪。子供たちを育てるためにリーンに連れてこられた。この庭にいる理由は、本を読んでいたら喉が渇いたから水を飲みに来たんだ。怯えてお化けなんて言ってごめんな。」
「謝ってくれたからもう気にしてない。」
「そっか、よかった。良かったら二人の名前教えてくれないかな?」
「私は月の神 リュナ。よろしくね。ほら、オドも自己紹介して。」
「ほ、星の神 オド……」
オドはそう言うとリュナの後ろに隠れてしまった。
「ごめんなさい。オドは初対面の人にはみんなこうなの。慣れれば話すようになるから気にしないで。」
「大丈夫だ。それにいきなり知らない人が自分の家の庭にいたらびっくりするだろうし、少しずつ慣れれば仲良くなれると思うし。」
「そう言ってもらえると助かるわ。」
そう言うとリュナは後ろに隠れているオドの手を優しく握っていた。
「そういえばここで何してるんだ?」
「月と星を見に来たのよ。私とオドは月と星の管理者で毎日少しの時間だけでもいいから月と星を見るようにしているの。」
「しかも今日は、生命の月が満月で雲ひとつない綺麗な夜空。こういう日は滅多にないし、力を循環させやすいから。」
「なるほどな。そういう事だったのか。」
「せっかくだしあなたも一緒にどう?」
「せっかくの機会だし、夜空を見るのも好きだしな。ご一緒させてもらうよ!それに2人とも仲良くなりたいしな。」
「それじゃ行きましょ。」
そう言うとリュナは俺の手を引っ張ってさっきの位置まで連れてきてくれた。
立ったままだと疲れるから、座って見ることになった。ちなみにこの庭は全面、芝生で出来ている。
座った順番は、左から順にオド、リュナ、俺の順番に座っている。
「元のいた世界の月も綺麗だったけどここの月はめちゃくちゃ綺麗だな。星空も吸い込まれそうなくらい綺麗だ。」
月と星を褒めると2人とも嬉しそうにしていた。
「元にいた世界???」
「ああ。俺はゲネシス様に呼ばれてというか連れてこられてこの世界に来たんだ。元は地球と呼ばれる惑星に住んでいて、日本と言う国に住んでいたんだ。連れてこられた理由としては、さっきも言った通り子供たちを育てるために呼ばれたんだ。」
「なるほどね。それじゃあ、あなたはリーン様と同じって事ね。」
「あなたじゃなくてナギでいいぞ。」
「そう?それじゃ私はリュナと呼んで。」
「分かった。リュナ」
頭を撫でるとリュナは少し恥ずかしそうな嬉しそうな表情をしていた。
その一連を見ていたオドが小さい声で
「僕……オド……」
と言っていた。
リュナ曰く名前で呼ばれるのが羨ましく思い、しかも僕だけ仲間はずれは嫌だと思ったらしい。
しかもこんなに早く名前を呼んでって言うのはこの短時間では珍しいみたいだ。
可愛い。なんだろう。例えるなら幼なじみの恥ずかしがり屋の弟が少し懐いてくれた感じって言うのかな。めっちゃ嬉しい。頭撫でたいけどもうちょっと仲良くなってくれたらだな。うん。頑張ろ。
「そういえばここの世界ってお月見とかって無いの?」
「お月見???何それ???」
リュナが首を傾げるとオドも不思議そうな目でこちらを見ている。
「俺が居た国、日本では月を愛でる習性が昔からあったらしくて、4つの季節の内、ひとつがとても月が綺麗に見られるんだ。その季節を秋って言うんだけど。秋の季節の丁度真ん中の日に1番月が綺麗に見えるんだ。その月を眺めながら収穫できる喜びや、感謝も込めて歌を歌ったり、収穫出来た作物で料理を作ったりしてお祝いしている日のことをお月見って言うんだ。」
「へぇーそんな日があるなんて素敵ね。この世界には残念だけど無いわ。」
「じゃあ、今度やるか。お月見」
「本当?!楽しみだわ!!」
リュナが喜んでいるとオドが悲しそうなめで目でこっちを見ていた。
「星を眺める日……は無いの?」
今すぐ泣きそうな目でこっちを見ている。
そんなオドを見てリュナは慌てて俺に聞いてきた。
「ナギ無いの?」
「天体観測って言って写真に収めたり、もっと綺麗にハッキリと星を見て星座を楽しんだりする事なんだけど、でもオドたちはもうしてるんだよな。」
「その今よりもっと綺麗に見るためにはどんな物が必要なの?」
「まず天体望遠鏡って言って凄く遠くの惑星をハッキリと見ることができる物なんだけどもちろん月もはっきりと見える。」
「それって作れないの???」
「んーまだこの世界の事をよく知らないからなぁ……もしかしたら出来るかもしれないけどいつになるか分からない。まぁとりあえず考えてみるよ。」
そう俺が言うとオドは少し嬉しそうだった。
リュナもその顔に安心したのかほっとしている。
「こ、今度……そっちの世界の星について教えて……星座が気になる。」
「よし。分かった!!そしたらオドもこの世界の星について教えてくれよな!」
「うん!!」
オドは嬉しそうにニコニコしていた。良かった。これで知り合い程度にはなったんじゃないだろうか。俺はそう信じているぞ!
それにしてもすっかり話し込んだから夜が明けそうだ。そろそろ部屋に戻ろうかな。
「リュナ、オド。俺はそろそろ部屋に戻るよ。楽しかったよ。ありがとう。また誘ってくれな。」
「そう。それなら良かったわ。お月見楽しみにしてるわ。」
「せ、星座も!!」
「ああ!!もう少しこの世界の事を知ってから月が綺麗に見える季節リュナに聞くからそれまで待っててくれ。オドもな。」
「「うん!!」」
「2人はどうする?部屋に戻るのか???」
「いいえ。今戻ってもどうせ眠れないし。このまま朝が来るのを待って、それから食堂に向かうわ。」
「そうか。それじゃあまた後でな。」
手を振るとリュナは笑って、オドは少し恥ずかしそうに振り返してくれた。
よし、癒された事だし部屋に戻って本の続き読むぞ。