2, まさかの
ガラリと、扉を開けた先、真っ先に飛び込んできたのは生徒達の奇異の視線と表情。というか、女子生徒のキラキラとした目と、男子生徒のしょぼんと落ち込んだ顔。
(うん、隠そう。その表情、隠そうよ。悪かったね、女の子じゃなくて。)
一人、心の中でツッコミながら、先生に誘導され、教壇に立つ。自己紹介を促され、少し考え、
「竜道 涙です。よろしくお願いします。」
無難な挨拶の後、ペコリと頭を下げる。すると、ざわり、と一瞬空気が騒いだ。家柄についてで何か言われることは目に見えていた涙は、特別疑問に思うことなく言われた席に座った。ぐるりと教室を見渡すと、もう暖かくなっているからか教室内の何人かは合服でいる。ちなみに、白狼の制服は白色のズボンに紺色のブレザーである。女子制服のほうはデザインも珍しく、白色のワンピースタイプのものに紺のブレザーを羽織るスタイルだ。さすが、セレブ校なだけあってどれも特注品。どこの学校も制服は高いというが、ここは別格のようだ。また、特殊といえば、授業スタイルもここは変わっている。大学のような、受けたい授業を選んでいくスタイルなのだ。
そこで、涙はふと、何気なく窓側に視線を向け、すぐさまサッと視線を逸らした。
(…おかしい、見間違いか?)
見間違いだろう、あんな髪色もあんな顔もどこにだって…。そう思って顔を上げる。しかし、そんな淡い期待は担任によって粉々に打ち砕かれた。
「あー、そうだな。隣だしちょうどいい。日早貴、案内頼むよ。」
(見間違いじゃなかった…!)
聞き覚えのある珍しい名字に思わず表情が凍る。隣の彼は、気怠そうに欠伸を噛み殺しながらちらりとこちらを見た。
「あー、俺、授業で忙しいんでー。」
「嘘つくな、授業出てないだろ。頼むなー。」
ちょうど良く、チャイムも鳴り、涙は表情が凍ったままクラスメイトとの初顔合わせは終わった。
ギリギリギリと音がしそうなくらい、ぎこちなく隣の席に顔を向ける。そこには幼い頃、嫌と言うほど、毎日見ていた顔がいた。いや、その顔を面影に持つ、思い出よりも、はるかに成長した幼馴染がいたのだった。涙の地毛と同じく色素の薄い髪はあの頃と変わらず、わりと無造作なままだ。美少年という顔立ちで少女と間違われていた彼はどこからどう見ても少女には見えなくなっている。まじまじと観察していた涙は、相手から視線をよこされ、ハッと表情を元に戻した。
(いや、大丈夫。同名で通せる。…気付くはずがない。)
「えーと、日早貴君、だっけ?案内はしてもらわなくてもいいよ?」
そう、彼に言えば、彼は少し気まずそうに視線を逸らした。
「いや、どっちにしろ、案内しないといけないから…。」
カタリと席を立ち、ドアの前まで行き、彼を視線だけで追っていた涙へ振り返るとクイとついて来いと言うように示す。思わず、慌てて彼の後について教室を出た。