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命令4



そして授業が始まるギリギリに私は教室に戻った。

今日もあと1時間で終わりという所休み時間になりどこか消えようと思っていた所に……


「月乃、お前今日大丈夫か?」


話しかけてきたのは「山瀬やませ 真也しんや」君だった。

なぜ話しかけるんだろう、今は放っておいて欲しいのに。

山瀬君は心配そうな顔をして私を見ている。

だったら今は私に話しかけないでくれと思ったが善意で言ってくれてるのだろう……


「私の事は気にするにゃ」


「月乃ってそんなキャラじゃなかったじゃん? 顔引きつってるしめちゃくちゃ無理してるよね」


「え?」


「あのさ、何か悩んでるんだったら相談乗るよ?」


「あ、ありがとにゃ、考えとくにゃ」


「だからなんなんだよそれ? まぁ月乃が言うと可愛いけどさ」


山瀬君はそう言い席に戻って行った。

こんな酷い状況で優しくされて少し嬉しかったのは事実だけど。


そのやり取りをしっかり藤原君に見られているのを藤原君の刺すような視線で感じた。


放課後になり私は帰ろうとしていた。

いつまでも学校なんかにいるから藤原君にちょっかい出されるんだ。さっさと行こう。


私は急いで昇降口まで行くとそこには藤原君が回り込んでいた。


「どこに行くのかな? これからは教室に誰もいなくなるまで僕と残ってもらう」


「そ、そんにゃ」


「おっと、緊迫感の欠片もないからもう普通の言葉に戻していいよ?」


「あ、はい」


良かった、やっと猫キャラから脱却できた…… てよくない! なんで私が藤村君と一緒に残るわけ!?


「なんだ? その嫌そうな顔は? いいのかな?」


「うぐぅ……」


仕方なく私はみんながいなくなるまで藤村君と残る事にした。

教室に誰もいなくなると藤村君は一気に本性を表した。


「さっき…… 山瀬と何話してた?」


「それは……」


「ほら、言えよ?」


「何か悩みがあるなら相談してくれと言っておりました」


「へぇ、そいつは許せないな。 月乃のことは俺が全部決めてやる。よし、明日山瀬に嫌いだと言え」


「そんな!? それは酷過ぎます! 山瀬君はいい人です」


「あ? 月乃に決定権はないんだよ? それともまたお仕置きされたいか?」


「それは……」


「で? 言うのか言わないのか?」


「畏まりました……」


そしてその日は終わった。 だがとても最悪な気分だった。 山瀬君は私を心配して言ってくれただけなのに……


このままじゃ私孤立してしまう。

そして次の日……


「おはよう、月乃。 今日も元気ないね?」


こんな時に限って山瀬君は朝一で私に話しかけてきた。

だが運が良い事に藤原君はまだ登校してない。


「おはよう、山瀬君。 昨日は心配してくれてありがとう」


「ハハッ、変な言葉遣いやめたんだ?」


「やっぱり変だったよね?」


「変は変だけど月乃可愛いからそれはそれで良かったのにな」


「もう、笑い事じゃないのよ……」


「何か月乃が元気ないのとあの変な言葉遣い関係あるのか?」


「そ、それは…… 」


すると藤原君が登校して来てしまった。

このまま話してるとヤバい!


「あ、私ちょっとトイレに行ってくるね!」


そう言って教室を抜け出した。 言えるわけない! 今日も心配してくれたのに私が山瀬君を嫌いなんて……


このままトイレで時間を潰そうか迷っていたら澤井さんグループが入ってきた。


「あれーれ? 美穂じゃん、今日はどうしたのかにゃ? うんちかにゃ?」


私をあからさまにからかいに来ている。

ここも長居できなそう。


「その言葉遣いやめて!」


「あれー? 普通に戻ってるにゃ〜、つまんないにゃあ、あはははッ」


澤井さんグループは私の事嫌いなのだろう、私だってあんた達嫌いよ!

仕方がないのでトイレを出た。


教室に戻ると藤原君が早く言えよと言う目線を私に送っていた。

そして写真を私にチラつかせる。 そんな…… もう、どうにでもなれ!


私は山瀬君の席へ向かった、数人の男子と話している山瀬君。 どうしよう……


「あれ? 月乃じゃん、山瀬! 月乃がお前のとこ来たぞ、もしかして……」


違う、違います!


「あ、あの! 山瀬君、ちょっといいかな? ここじゃ話しにくくて」


「ん? ああ」


「おお! 山瀬告白だぞ!? しかも月乃から! てか喋り方普通になってんじゃん」


「勝手な事言ってんな、じゃあ階段の辺りでいいか? 今だとあんま人いないから」


「うん……」


とても嫌な気分だ。 これから山瀬君と絶交するようなものだ、山瀬君はそんな事も知らずに飄々としていた。

階段に着き山瀬君は問いかけて来た。


「それで? どうしたんだ?」


「あのね…… もう私に話しかけないで欲しいの」


「なんで?」


「………… 私あなたの事嫌いなの! それが理由」


「は? 意味わかんねぇな、いきなりそんな事言われても」


「大っ嫌いって言ってるでしょ!!」


私の声に山瀬君は黙ってしまった。

もうダメだ、耐えられない。 私は山瀬君を置き去りにして教室に戻った。


そして藤原君の視線など気にせずに机に突っ伏し静かに泣いた。

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