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命令19


インターホンを鳴らすとお母さんらしき女の人が出てきた。


「あら、どちら様でしょう?」


「あの、貴樹君のクラスメイトの月乃 美穂と申しますが貴樹君はいらっしゃいますか?」


「ああ、貴樹の。 意外ねぇ、あなたみたいな知り合いがいたなんて」


「それで…… 貴樹君は?」


「あの子部屋から出てこないのよ。 母親の私が言うのもなんだけどおかしな子なのよ」


そう言うお母さんは明らかに冷たい顔で言い放った。


「あの、貴樹君のお部屋に行ってもよろしいでしょうか?」


「好きにしなさい」


「はい、お邪魔します」


「ここよ、貴樹。お客さんよ、女の子の」


するとガチャッとドアが少し開いた。


「ああ、美穂か。 何できたの?」


「その、心配で」


「帰れよ」


「嫌だ」


私は隙間から強引にドアを開け貴樹君の部屋に入った。


「なんなんだよ? ここまで来て」


貴樹君の部屋はカーテンが閉め切っており薄暗かった。


「どうして学校に来ないの?」


「それが美穂になんの関係が?」


「質問を質問で返さないで」


「美穂変わったなぁ、随分威勢が良くなった」


「そりゃ貴樹君に鍛えられたもんね、いろんな意味で。 それで?」


すると貴樹君はUSBを差し出した。


「これは?」


「ここに美穂や山瀬、澤井の画像が全部入ってる。 それ以外にはないよ。 本当だ」


「なんでこれを?」


「もうそれやるから帰ってくれないか?」


「私はこれを貰いに貴樹君の所に来たわけじゃないの、でもくれるならなら貰う」


「なんか性格悪いな今日の美穂は」


「それも貴樹君のお陰、ねぇ、ここまで来たんだから理由くらい教えて」


「…… 俺はね、失敗作なんだ」


「失敗作?」


「俺の父さんは医者をやっててね、俺から見ても優秀な人間なんだ。 俺も当然そんな人間だと思われて育てられてきた。 俺も将来は医者になると思ってた。だけど俺はまったく優秀じゃなかった、何をやっても平均、ただの凡夫だったんだ。そんなんだから俺は父さん母さんからも見放されこの様だ」


「うん、それで?」


「それで俺は捻くれたんだ、いつしか頑張ってる奴や輝いてる奴にとてつもなく嫉妬した。将来有望な奴はみんな消えればいい、美穂みたいなチヤホヤされた奴も大っ嫌いだ。だけど美穂はその上優しかった。こんな俺にもな」


「そんな美穂を俺のものにして美穂を貶めたくなったんだ、俺と同じ位置に美穂を落として俺と同じ思いをさせたかった。それと同時に美穂を手に入れたっていう優越感が欲しかった、そうすれば俺は特別な奴になれると思った。 だけど美穂は違った。 いくら落としても優しかった、俺みたいに心根が腐る事なんてなかった」


「そうなったら俺は途端に虚しくなった。 そうか、やっぱり俺はどうやっても1人ぼっちだったんだって。 それで嫌になった」


「それで?」


「さっきからそれでそれでばっかで俺の話聞いてたのか!?」


珍しく貴樹君が声を荒げた。


「下らない! 下らないよ! それで見返そうと努力した? わかってもらおうとした!?」


「したさ! それでもダメだったんだよ! お前みたいな奴にはわからない!」


「ええ! わからないわよ! それは貴樹君が本当に必死になってないからでしょ!?」


「他人事だと思って勝手な事言うなよ!」


「私だって貴樹君にいろいろめちゃくちゃにされたんだよ! 他人事なわけないじゃん! わかってもらえないなら私も手伝う、だから諦めないでよ!? 貴樹君は私の彼氏なんでしょ!? だったらしっかりしなさい!」


「ッ!?」


私は貴樹君に口付けをした。


「何すんだ!?」


「手伝うから…… 共有するって言ってたじゃない。 だからそんな全てが終わったなんてみたいな顔しないで」


「ここまでしておいてまだ彼女気取りでいるなんて本当に美穂は懲りないよなぁ」


「私結構一途だったみたい、だから貴樹君の事も途中で投げ出したりしないなら、一緒に頑張ろう?」


「バカじゃないのか……」


「明日からはちゃんと学校来て、ね?」


「わかったよ…… まさか美穂にこんな事言われる日が来るなんてな」


「そうだね、貴樹君にこんな事言うなんてこんな風に思ってるって気付かされたんだよ? だから自信を持って。 私を変えたのはあなたなんだよ?」


「そうだな、卑屈で陰キャな俺にここまでしてくれるのは美穂だけだもんな……」


「それとこれからはちゃんと貴樹君のお父さんやお母さんに私の事を彼女だって紹介して? 」


「なんでだよ?!」


「私貴樹君の家すらわからなかったんだよ? だからお詫びに紹介くらいしてくれてもいいじゃない?」


「わかったよバカ……」


貴樹君はようやく笑ってくれた。 彼の本当に笑った顔を見たのは初めてかもしれない。 これからは本当の彼を私に見せてくれるかな?






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