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命令1


「今日も可愛いね、月乃さん」


「あ、ありがとう、藤原君」


私「月乃つきの 美穂みほ」には悩みがあった。

悩みの種は今しがた話しかけられた「藤原ふじわら 貴樹たかき」という男子の事だ。


私は高校に入りモテていた。 理由は単純。 可愛いからという事で。

もともとモテる方だったが高校生になる頃にはさらにモテていた。


自分にとってそれはマイナスになる方ではないしむしろいい事なんだと思っていた。


告白もされるが別にこれといったピンとくる男子もいないので断っていた。

こういうのはいつも自分も嫌だし断られる男子も嫌だろう。


それがちょっとした悩みだった。

別にそれだけなら大した事ないのだがある男子に告白され私はいつものように断った。


「え? 言ってる意味がわかんないんだけど? 俺のどこがダメだった? やっぱり顔がカッコよくないから?」


「ううん、そうじゃないけど私誰と付き合ったりとかそういうの考えてないから誰に告白されても同じなの。 ごめんなさい」


「じゃあ、俺以外の男とは絶対付き合わないだね?!」


「え!? それって何がどうなってそうなるの?」


藤原君は私の両手をガシッと掴み「約束だよ」 と言ってきた。

約束も何も私は彼の言ってる事がまったく理解出来なかった。


「俺、いつも月乃さんを見守ってるからね」


「ち、ちょっと待ってよ!」


藤原君は私の言葉が聞こえなかったのか走り去ってしまった。

なんなんだろう?


だが私はそんな事はすっかり忘れてそれから数日経ち、いつもの日常に戻っていた。


「ねぇ美穂、私らさぁ、ちょっとピンチで美穂にお願いがあるんだけど?」


「え、 何?」


「私の彼がさ、美穂に惚れちゃってさ。

だから美穂から直接断って欲しいのよ?」


そう言ってきたのはケバケバしい女子の「澤井さわい 絵梨花えりか」はっきり言って全然仲は良くないし私的にはあまり関わりたくない人だ。

でもその澤井さんの彼が私を好きになった?


「えーと……」


「普通だったら私美穂にブチ切れてるんだけどさ、いくらなんでも美穂相手だと私が頑張っても勝ち目ないなぁって思ってさ! だからさ、今日の夜付き合ってよ」


「う、うん。 わかったよ」


私は押すに押されて了承してしまった。 この決断が私のその後を大いに揺さぶるとも知らずに……


はぁ、行きたくないな。 なんで私が澤井さんの彼氏を振りに行くのよ。

放課後になり約束の時間まで街をブラブラして潰す。


そろそろ行こうかな。

澤井さんの要件なんてとっとと済ませたいし。


そう思いながら澤井さんと約束した場所に向かった。

その場所に近付くとキョロキョロと澤井さんが私を探しているのが見えた。


そして私を見つけると大きく手を振りこっちだよと言われた。 だけど私は何か変だとすぐ気付いた。


そこには澤井さんの彼氏らしき人はおらず、澤井さんの友達らしき派手な女の子と中年の男性が居た。

何この状況?


「ごめーんッ! あれ嘘なんだ、でもピンチなのは本当でさ、このおじさんに超可愛い子紹介するからって約束してたの。 それで美穂に来てもらったわけ。 お金弾むって言うから美穂にもあげるよ」



………… これはもしかして援助交際という奴ではないのだろうか?


「この子が美穂ちゃん? 言われた通り可愛いねぇ」


中年男はいやらしい笑みで私を値踏みするような目で見ていた。 その視線に悪寒が走った。


「じゃあホテル行こうよ?」


中年男が私の手を掴み私をホテルに連れて行こうとした。 私は怖くなってその手を振り払い逃げ出した。


「ちょっと! 美穂が逃げたよ、あんたら捕まえに行くよ!」


そんな声が後ろから聞こえたが私は必至に走った。 騙された騙された騙された!


私は必至に逃げ駅のホームまで来ていた。 どうやら澤井さん達は撒いたようだ……


電車に乗り私はさっきまでのやり取りに恐怖を覚え電車の隅で密かに泣いた。

明日澤井さんと顔合わせられない。 どうしたらいいんだろう?


結局私は数日学校を休んだがいつまでも休むわけには行かず登校する事になった。


学校までの電車でどんな顔して澤井さんに会えばいいのかずっと悩んでいた、それよりも大きな失敗をしていた事などまったく気付かずに……


電車が駅で止まり憂鬱な気分でホームに降りた。

こんなんでも行かなきゃダメなんだよね……


もとあと言えば澤井さんが私を騙したのが悪いんだ。 なんで私がくよくよしなきゃいけないんだろう? とだんだん怒りの方が込み上げてきた。


学校に着きクラスの中に入ると澤井さんがいた。

こっちを訝しげな目で見ている。 まぁそうなるだろうと思っていたけど。


「ちょっと美穂! よくも台無しにしてくれたわね? あの後大変だったのよ!」


「そんな事私に言われても…… 大体話が違ってたじゃない!」


「あんたのせいで私金欠なんだから! お詫びしてちょうだい!」


そして澤井さんは手を出してきた。

なんのつもりなんだろう?


「なにそれ?」


「はぁ? 喉乾いたからジュース代ちょうだい!」


「なんで私が?」


と言っても澤井さんは譲らない。 もういいや、払ってしまおう。これで終わるなら安いもんだと思い私はジュース代を彼女に渡した。


「顔がいいからってチヤホヤされてるからって調子乗んなよな!」


バン!と私の机を叩き澤井さんは行ってしまった。

何よそれ? 私だって好きでこうなったんじゃないわよ!


そしてその放課後私はいつも通り帰ろうとした。

すると藤原君に呼び止められた。


「月乃さん、ちょっと付き合ってほしんだけど?」


ただでさえ澤井さんのせいで嫌な思いをしていたので私は藤原君の言う事なんて聞く気はなかった。


「ごめん、用事あるから」


「へぇ? 用事ってこれより大事な用事なの?」


藤原君はそう言って私に写真を見せてきた。

そして私は目を疑った。 なんと中年男に手を握られている私の写真が何枚もあった。


「これって援助交際だよね? 月乃さんがこんな事してるなんて幻滅したよ」


「ちがっ!」


否定する前に藤原君は私の肩を掴んで軽蔑するような眼差しで私に言った。


「土下座」


「は?」


「だから土下座! こんなのもし公になったらどうなると思う? 俺いっぱい持ってるんだよ? それに言ったでしょ? いつも見守ってるって」


私は藤原君の言葉にガクガクと脚が震え出した。なにそれ? 私をつけていたの? いつから? なんで!?


「で? どうするの? バラされたくなかったら土下座」


私はその言葉に逆らう事が出来ず土下座をした。

そうして私の頭の上に藤原君は足を乗せた。


「いいねぇ、あの月乃さんが。 俺の月乃さんが俺の前で土下座してるよ! 」


藤原君は歓喜しさらにこう言ってきた。


「これからは俺の命令に従う事、そして俺の前では月乃さんはメイドで奴隷だ。わかったら顔を上げろ」


私は目の前で起こっているこの状況に訳が分からず頭を上げた。


「わかったか?」


「……うん」


「うんじゃない、畏まりました。ご主人様、だろ?」


「畏まりました、ご主人様」


こうして私は彼のメイドで奴隷になった。



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