命令16
貴樹君と本当に打ち解けてしばらく経ったある日学校に行くと廊下で山瀬君が久し振りに話し掛けてきた。
「なぁ、最近月乃も変だぞ? よく学校サボったり変に藤原と仲良くしたり」
「変って何が? それに貴樹君の悪口はやめてって言ったよね?」
「何があったか教えてくれよ、少なくとも俺は月乃を友達だと思ってるんだ」
「…… いいわ、もうどうでもいい事だしね。私ね、澤井さん達に騙されて援交に誘われたの」
「はぁ!?」
「それでね、おじさんに手を掴まれてる所を写真に撮られたの。 怖くて私は逃げたんだけど」
「なんで言ってくれなかったんだよ!?」
「言ったとして山瀬君にどうにか出来た?」
「それは…… その写真を取り返すとか」
「写真なんて何枚でも作れるの、だから返って事を大きくして終わり。ね? どうにもならないでしょ?」
「それをしたのが藤原なら脅されてたってのはわかった。 だったらなんでそんな奴と楽しそうに付き合ってられるんだ? 普通は無理だろ?」
「貴樹君は私を好きってのは本当なの。 それに私に気付かせてくれた。みんな山瀬君みたいに私の事を表面しか見ない人達ばかりだって!」
「待てよ! 俺は月乃の事を好きなんだ、だから月乃を放っておけないんだ。 それにちゃんと月乃の事をわかってやりたいとも思ってる」
「ありがとう、そう言ってくれるのは嬉しいし山瀬君が優しいってのもわかってる。 だけどもうどうにもならないの。 私もうめちゃくちゃだよ」
「今からだってどうにでも出来るだろ? 遅い事なんてないよ」
「遅いよ、私もう1人ぼっちなの。 家でも私が援交したって思われて両親からの信頼も無くした。 貴樹君は私と同じなの。 だから私の事をわかってくれるのは貴樹君だけ」
「だからもう私に構わないで? 」
そう言って私は山瀬君を振り切った。 もうこれでいいんだ。 私は貴樹君の元へ向かった。
だけど私は貴樹君の様子がだんだんおかしくなっているのを感じた。
「また山瀬と何か話してたようだね?」
「うん、私にもう構わないでって言ってきたよ」
「へぇ、本当にそれで良かったの?」
「どうしてそんな事を言うの? 貴樹君私と山瀬君が仲良くしてるのよく思わなかったでしょ?」
「ああ、前はね」
「え? 今は違うの?」
「どうでもいいかな」
「それってどういう事?」
「俺は美穂の事が好きだった」
「なんで過去形なの?」
「美穂みたいな優しい子を好きになれば俺も誰からでも好かれる人間になれるかもって思っていた。 そしてそんな美穂を俺みたいな最低の人間がいいように傷付けている事に優越感に浸っていた」
「……それで?」
「結局俺は美穂と付き合っていても何も変わらなかった、俺は最低のままだったんだ。 まぁ付き合っている人間を傷付けたいと思ってた時点で俺に変わる要素なんてなかったんだってな」
「そ、それじゃあ私の事は?」
「今の俺からしてみれば顔がいいだけの無価値な人間にしか思えないよ」
「嘘だよね? また意地悪してるだけだよね」
「嘘じゃないよ、そうやって依存して来られるのも正直ウザいな。まぁ俺も美穂に依存していたけど」
「嘘だ、貴樹君嘘ついてるだけだよ」
「こんな所で泣きそうになるなよ? もう学校帰るか?」
「…… うん、帰る」
私は貴樹君のいきなりの手のひら返しにわけがわからなくなっていた。 どうしてそんな事突然言えるの?!
そして私達は学校を早退し2人でしばらく道を歩いていた。
「ねぇ、さっきの話……」
「ああ、そうだったね」
「あれってあの場限りの嘘だよね? また私を落ち込ませて楽しんでただけでしょ?」
「違うって言ってるだろ? もう美穂に興味をなくしたんだ。 我ながら勝手だけどね」
「そんな…… 私の事をこんなにめちゃくちゃにしといて最低、本当最低だよ」
私が立ち止まると貴樹君は私を置いて1人でどこかへ消えてしまった。
裏切られた、貴樹君に裏切られた。 ううん、もともとそんな信頼関係があったのか…… 傷の舐め合いだったんじゃないの?
私が貴樹君を満足させられなかったから貴樹君は私を拒絶したの?
結局私は貴樹君に飽きられ、挙句の果てに家庭も壊され友人関係も壊された。 ふふッ、間抜けだ……
でも貴樹君だけのせいじゃないよね……
そこには私の意思もあったのは確かなんだ。
このままじゃダメだ、また貴樹君とちゃんと話さなきゃ!




