命令15
私はその日生まれて初めて学校をサボった。お父さん達には学校に行くと言っていたがもう私にはいい娘を演じる必要なんてないんだ。
別に今までだって演じていたわけじゃないけど昨日までの私は何もわかっていない私だった。
ただ流れに身を任せてあの他人のようなお父さん達の見せ物だった私はもういないしもうなれない。
昨日から私に対する態度を一変させたあの親達は写真一枚で覆るくらいの薄いまさに紙切れ一枚の関係でしかなかった。
私が通学路でウロウロしていると藤原君がやって来た。 今日は彼と昨日待ち合わせをしていた。あんな親の為にわざわざ学校に行ってやるのもバカらしい。
今の私にとっては藤原君といる時間の方がよっぽど大事だ。
あの親達には私が落ちるとこまで落ちるのを見せてあげよう、1度無くした信用はどんどんドミノ倒しのように私の心を崩していった。
「やぁ、大分スッキリしたような顔になったね」
「おはよう、貴樹君!」
「貴樹君? 随分と俺も好かれたな美穂」
「うん、私の事わかってくれるのは貴樹君だけだもん」
「で? 俺までついでに学校をサボらせてどこに行くんだ?」
「わかんない…… どこかに行きたいしどこにも行きたくない気もする。 何言ってんだろね私」
「まぁ最初はそんなもんさ、この分だと写真の効果はもう美穂にはなさそうだな」
「うん、全然ないよ? クラスのみんなに見せても私的には何も問題なし」
「へぇ? 随分と強気だね?」
「でも貴樹君を好きなのは変わらないよ? だから私を1人にしないで……」
「そうだな、1人は寂しいだろ? 誰にもわかってくれないもんな」
「貴樹君がいてくれれば私はそれでいいよ。 私はもう貴樹君しかいないの」
「ふぅん、じゃあ山瀬は?」
「山瀬君? 山瀬君なんかに私の事なんてわかるはずない。 私がどんな思いをしたかなんて……」
「じゃあこれからどうしようか。 とりあえず俺本屋に行きたいんだけど?」
「それじゃ一緒に行こう! もともと私は貴樹君の付き人みたいなもんなんだし」
電車に乗る、いつもは登校時間にしっかり行っていた私はとっくに登校時間を過ぎた電車に乗るのはとても解放的に思えた。
「楽しそうだな? 美穂」
「うん、この時間に乗る電車って凄く新鮮に感じるの。私今までこんな事すら知らなかったんだなぁって」
「幼稚園児じゃないんだからさ」
「ただ1人ぼっちは怖いから…… 藤原君はずっとこんな思いをしてきたんだね」
「だから俺がいてやるだろ?」
「うん、だって私1人じゃ抱え切れなかった…… 私って弱かった。 ううん、今もそう。 だから貴樹君の思惑通りだね!」
「それなら俺を恨んでてもおかしくないけど?」
「そりゃあそんな気持ちはあったよ? でもお陰で気付かされた。 私はただの上辺だけだったって。築いてきた物全てがあんな紙切れ一枚で粉々になるなら最初からなくてよかったんだって。全部バカらしくなっちゃった」
「そうだよ、そんなんで壊れる関係ならない方がいいのさ」
「だから……だから貴樹君は私を見捨てないで。お願い」
「俺がどれだけ美穂を好きか知らないのか?」
「知ってる。 だって貴樹君は私の為に体を張ってくれるくらいだもん」
「そうさ、だから2人でお互い苦しみを共有すればいい。 だけど俺は美穂にもっと苦しい思いをさせるかもしれないな」
「でも貴樹君がいてくれるんでしょ?」
「ああ、そうだな」
そして電車は街の駅のホームで止まり私達はそこで降りた。
貴樹君は本屋に行き私もその後をついていった。
貴樹君は小説のコーナーに行った。 私がついていったら邪魔かなぁ? 邪魔だよね、急かすような事はしたくないので私は参考書のコーナーに行った。
あれ? なんで私こんなの見てるんだろう? 勉強なんてもう適当でいいのに。 習慣ってなかなか取れないんだなって思った。
そしてファッション誌を手に取り見ていた。 こんな服着たら貴樹君喜ぶかな? と考えていたら貴樹君が横にいた。
「わっ! ビックリした」
「へぇ? 美穂ってそんなの好きなの?」
「えーと、貴樹君こんなの私が着たら喜ぶかな?って……」
「全然喜ばないね」
「へ?」
「言ったろう? あ、言ってないかもな。 そのままでいいよ、そのままの美穂で」
貴樹君の顔が不気味に笑った。
そのままの私?
「どういう事?」
「今の美穂が見せてくれるならなんだっていいよ、変に着飾らなくても」
そして本屋を出て私はカフェとか行きたいなって言ったけど貴樹君はそんな所に普段行かないから行きたくないと断られてしまった。
男の子の趣味や興味があるものなんて私には全然わからなかったのでどうしたものかと思っていた。
「じゃあその辺ブラブラしよう、特に俺も後は目的ないし」
「うん、貴樹君が行くとこについて行くよ」
そして夕方まで私達は街をウロウロしていたけど貴樹君と一緒にいれば私は別にどこに行ってもよかった。
そして帰る時貴樹君と別れると言いしれようのない不安が私を襲った。
また1人になった、家に帰りたくない。
たが他に道はなく帰るしかなかった。 結局他人に生かされてる私はどんなに強がっても縋るものがないと生きてはいけないんだと思った。
そして家に帰ると案の定学校から連絡が入っており私がサボった事はバレていた。 親達は怒っていたが私には言う事全てが雑音にしか聞こえず夕御飯も食べずに部屋に篭った。
いいんだ別に、どう思われたって。
私には貴樹君がいるもん。 私は貴樹君に依存するようになっていた。




