命令14
異変が起こったのは2日くらい経った頃学校から家に帰った時……
「ただいまー!」
「ちょっと美穂、こっち来なさい!」
お母さんが何かとても深刻そうな顔をして私に言う。
どうしたのかな? 何があったんだろう? テストの点数は悪くなかったし……
と私は呑気に考えたいた。
私はお母さんに言われるがリビングに向かった。 すると私が中年男に連れられている写真がテーブルの上に置かれていた。
一瞬思考が停止した。 なんで?!どうしてここに!? この前まではなかった、なんで、なんで!!
「あんたの洗濯物畳んで置いておこうと思ったら衣装ケースに隠すように入れてあったわよ! これどういうこと!?」
まさか…… あの時藤原君が私の部屋を物色してたのはこれを………
「あんたはこんな事する子じゃないと思ってたのに! お金だって不自由させなかったじゃない! どうしてこんな事してるの?」
私はお母さんの声は通り抜けてグルグルと藤原君の言葉だけが木霊していた。
同じ所まで落ちてきてもらう、一緒に苦しんで欲しいという歪んだ思想が……
そして私は我に返った。
「ち、違うよ! 私が、私がそんな事するわけないじゃん」
「おかしいと思ったのよ!急に彼氏だなんて連れて来たりあんた最近元気なかったりやましい事してたって自覚があったからでしょ!」
「そんな事ない! そんな事ない!! 私やましい事なんてしてない、私がしてないって言ってるのに信じてくれないの!?」
「だったらなんでこんな物隠してたのよ! あんたは近所でも評判良くて可愛いって言われてて自慢の娘だったのにこんな事してたなんて周りに知れたら……」
「お母さん…… 私のそんな所しか見てないの? 私がもし仮にそんな事してたらすぐ見捨てるの? ご近所の評判の方が私自身より大事なの?」
「あんた……! やっぱり本当にやってたのね!?」
「やってない!! お母さんは本当は私の事信じてないんだ! 私の表面しか見てないんだ! だから彼氏を連れてきたって言っても私にそぐわなかったから否定したんだ! そういう事でしょ!?」
「美穂! 一体あんたをここまで育ててきたのは誰だと思ってるの!?」
「うるさい! お母さんなんて大っ嫌い!」
私はもうお母さんの顔を見たくなくて部屋に駆け込んだ。
最悪…… 最悪!! なんでわかってくれないの!?
私だったら私が持ってるわけないじゃない!
藤原君…… 最低だよ、私の家庭をめちゃくちゃにするなんて。 これが狙い通りなの? これじゃあ私一生言われちゃうよ……
私は藤原君、お母さんに失意のドン底まで落とされた。 私ってなんなんだろう? 今まで何をしてきたんだろう?
藤原君を甘く見ていた? お母さんを信じていた? どれも間違っていた? 誰も私を信じてくれないの?
澤井さんにも騙された、藤原君にも騙された、挙げ句の果てに信じてたお母さんも私を信じていなかった。
私はしばし自分の置かれた状況を整理していた。どう言えばよかったんだろう、ああすればよかったとか色々考えた。
ああ、そうか…… 私が持ってる持ってないはお母さんにとっては関係ないんだ、私がそんな事をしてるっていうのが気にくわないんだ。
だから私が自分でそんな証拠をもってておかしいとか考えないしもう見た時点でやってる前提なんだ。 だから私が何を言っても無駄なんだ。
藤原君はそうなるのがわかっていたのかな? だから私にああもしつこく大事に育てられたんだねとか言ってきたんだ。
そんな物は脆いって。 家族でも上辺だけしか見てないって私にわからせようとしたの?
だったらわかりたくなかった、わからなくてよかった。 こんな思いするなら……
藤原君はずっとこんな思いをしながら生きてきたの?
もう何もしたくない。 何も考えたくない。 きっとお父さんが帰ってきたらまた同じ押し問答されるんだ、わたしの意見なんか聞かないで。
急に今まで価値があったものがなくなっていく錯覚に捉われる。
所詮私は可愛くて世間様にも評判がよくてお母さん達の理想の私でいなきゃダメなんだ。
仮に今回の事がなかったとして似たような事があったらきっと同じような事になったんだ。
遅かれ早かれ結果は同じだったんだ。 私はピエロだ、何が家族なんだ。何が一緒にいてドキドキだ……
私は藤原君と同じ立場に近付いたのだろうか? だったら私のこの苦しみを藤原君はわかってくれるのかな?
共有してくれるのかな? 慰めてくれるのかな? 私を1人にしないでくれるのかな?
そうしてお父さんも帰ってきてまた騒ぎになった。 全部お母さんの言う事を信じたお父さんも私の味方なんかじゃなかった。
ここは私の居場所なんかじゃないんだ。誰も私を信じてくれないなら私も信じない。
ただの他人が暮らしているこの家は私にとって今日からとても寂しい場所になった。
ふとスマホを取り出した。 藤原君出てくれるかな? 藤原君に電話してみた。
だが藤原君でさえ私の電話に出る事はなかった。
あはは、1日で全部壊れた。あっという間…… 私の人生1日で否定されちゃったよ、これからどうしよう。
本当に援助交際でもやった方がいいのかな? スッキリするのかな?
そんな事を考えていると藤原君から電話が来た。
私はすかさず電話に出た。
「藤原君! 私大変な事になってるよ……」
「声を聞けばわかるよ」
「どうしてあんな事したの?」
「好きだから」
「え?」
「好きだから月乃を俺と同じ場所に立たせたいって言っただろ?」
「…… 私同じになれたのかな?」
「さぁ、それはどうかな?」
私に投げ掛ける藤原君の言葉は傍目から見ればとても冷酷なように聞こえただろう。
だけど今の私には救いの声に聞こえたのは同じ思いをしたかはわからないが私にしかわからないように感じた。




