命令10
水族館に月乃と行ってから数日俺は月乃にイライラをぶつけていた。
月乃も月乃だ。 よくもまぁここまで大人しく俺の言う事を聞くもんだ。
ただ嫌がる月乃や泣きそうになっている月乃を見るのは相変わらず気持ちがいい。汚れていない人間を自分色に染めていくようで。
とある日澤井グループが月乃に優しくしている山瀬をよく思わないのか月乃と山瀬が話している最中に割り込んだ。
「ねぇ山瀬、あんた知ってる?」
「何が?」
「美穂ってさ清楚ぶってるけどさぁ、実はね、裏ではとんでもない事してて」
「澤井さん!何言ってるの!?」
月乃が焦る。 ああ、ここでバラされたら月乃を好きに出来なくなるじゃないか。仕方ない、澤井のカードをこんなに早く使う事になるとは……
「おい、澤井」
「ん? なんだ、ぼっちの藤原か。なぁに? 私今山瀬と話してるんだけど」
「まぁこれ見ろよ」
俺は自分の所へ澤井を誘導する。そしてコソッと澤井の援交写真を見せた。
「てめぇ、どこでそれを……」
澤井の顔が怒りで歪んだ。
「いいか? 俺は別にお前なんてどうでもいい。だからさ、お互い平和的にいかないか? 今山瀬に言おうとした事やめろ。
澤井も面倒な事になりたくないだろ?」
「このストーカー野郎。 ぼっちでストーカーとかマジでキモいんだけど」
「悪いな、人間観察が趣味なんだ」
「てめぇ後で覚えてろよ!」
澤井はそう吐き捨てると自分達のグループに戻っていった。 これは後々報復されそうだな。 一応準備はしておくか。
山瀬と月乃は俺と話して急に戻った澤井を不思議そうに見ていた。
そして月乃は俺に振り返った。
お前も何また山瀬と仲良くしてるんだよ? 後でしっかりお仕置きだな。
放課後になり月乃が俺が呼ぶ前に話しかけてきた。
「あの、さっきは助けていただいてありがとうございます」
「助けた? 俺が? 何を?」
「えと、澤井さんの事です。 あの時の事喋られそうになった時……」
「ああ、あれはあそこでバラされたら月乃の秘密がバレて俺の好きなように出来なくなるからああしただけさ」
「それでもありがとうございます……」
「というより月乃も何山瀬と仲良くしてるんだ? もっと酷い事されたいか?」
「……山瀬君はいい人です」
「何? 山瀬の事が好きなの?」
「好きとか……そういう事じゃないです」
「もしそうだったら許せないな。 俺というものがありながら、土下座しろよ」
そうしていつもの忠誠を確認し月乃はそれに従う。
この瞬間は何者にも変えがたい幸福感が俺を駆け巡る。 ああ、澤井なんかに邪魔されるものか。
そしてまた数日経った頃……
「月乃、今日も俺に付き合え」
「はい」
そして月乃を付き従えコンビニで夕飯を買う。
「あの、いつもコンビニのお弁当だと栄養偏りますよ?」
「なんだ? その言いよう。 だったら月乃が何か俺に作ってくれるのか?」
「いえ、そんなわけでは……」
「何も出来ないくせに人の事に口出すなよ」
「すみません……」
俺と月乃はコンビニから出るとそこには澤井と見知らぬ男がいた。
「よう、ストーカー野郎。 月乃の事妙に庇うと思ったらあんたらできてんの? こっちは私の彼氏ね」
「なんだ澤井か、何の用だよ?」
「ちょっとさぁ、ダブルデートしたくてさぁ」
「お! 絵梨花、この可愛い子お前の友達か!? そこのイモい男はもしかして彼氏? まったくつりあってなくね?」
「でしょー? 巧。 こっちのストーカー野郎に私秘密握られててさぁ、困ってんのよ」
「え? このイモい奴に?」
「多分美穂もそれでこいつに付き合わされてんだと思うけど許せなくない? こんな奴にいいようにされて。 ね? 美穂」
「あ、あの私は。澤井さんだって私の事騙して……」
「ああ!? 人聞きの悪い事言ってんじゃねぇよ!」
「じゃあさ、積もる話もあるんだしあっちの裏行こうぜ? そこなら誰もこねぇしよ」
「藤原君、行かない方がいいよ……」
「心配してくれてるの?」
「だって澤井さん達何考えてるか…… 危ないかもしれないよ!」
「へぇ? それは楽しみ」
「何かあったらどうするの…… 怖くないの?」
「月乃がいなくなる方が怖いかな」
「こんな時に何言ってるの……」
「まぁなんとかなるだろ」
「行くのか行かねぇのかはっきりしろや、逃がさねぇけどな」
そう言って澤井の彼氏は俺らをそこへ誘導した。
多分俺の体に言い聞かせる気だな。 ちょうどいい、どうしてやるか……




