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命令9


「明日は休みだろう? 俺に付き合えよ」


藤原君にそう誘われてしまった。 山瀬君を叩いてしまった日、私はもう授業も何も頭に入らなかった。


そして原因を作った藤原君に泣きついてしまうなんて失態も犯してしまった……

彼は私をどうしたいんだろう? 私を好きなの? それとも利用したいのだろうか?


藤原君は私に意地悪ばかりして私を貶めて楽しんでいるようにしか見えない。

あの件があってから私は女子から白い目で見られるようになっていた。


当たり前だろう、それもこれも藤原君のせい…… なのかな。

私がはっきり断っていたらそもそもそんな事もなく。


でも私は藤原君に弱味を握られているしでもそれは私がしたくてしたわけじゃない、ダメだ。 頭がどうにかなりそう……


あんな奴になんでこんなに振り回されなきゃいけないの? 山瀬君はそれでも私に優しいから余計に罪悪感が湧くよ。


藤原君となんて休みの日を過ごしたくない、けど断れば写真をばら撒かれる。

藤原君の事だ、私が否定しても否定しようのないくらい私を完膚無きまで陥れるだろう。


「あの、どちらに行かれるんですか?」


「そうだなぁ、水族館」


「え? 水族館?」


意外だった、水族館なんてまるでデートみたい……


「嫌なのか?」


「嫌じゃありません」


藤原君とじゃなければ嫌ではないという事だけど。


「じゃあ決まりだな」


そして私は藤原君と2人で電車に揺られている。


「月乃は私服でも可愛いな」


「あ、ありがとうございます」


「おっと、今日は普通にしてていいぞ? おかしいからな」


いつもおかしいとは思わないの? 私にこんな事ばかりさせてこいつは……


「うん、わかった……」


駅から降りるともう少しで夏なので気温差でクラッとくる。


「暑いな」


「そうだね」


「おい、ボサッと突っ立ってないで早くしろよ」


全然優しくない藤原君は私の行動にいちいち文句を言ってくる。 本当に利用するだけ私を利用したいんだ……


私は水族館に着くと藤原君の事など忘れて沢山のお魚達に癒されていた。


「月乃はそんな風に笑うんだな」


「え?」


「いいよな、月乃は楽しそうで」


「藤原君は楽しくないの?」


「何か物珍しい物でも見れるかと思って来てみたけどまぁ普通だな」


「普通…… 綺麗だと思わないの?」


「何が?」


「泳いでるお魚や、この風景?」


「月乃みたいに素直に楽しめるほど俺はお気楽じゃないんでね」


「私が……お気楽」


あんたに絶望のドン底まで落とされてるのに何を言ってるんだろうこの人は……

でもそう言う藤原君は本当に楽しくなさそうだ。


「ねぇ、藤原君っていつもそんな顔してるよね? 」


「へぇ、俺の事よく観察してるね。 そんなに俺の事が気になるの?」


「…… だって私に意地悪してて笑ってる時も目の奥ではつまんなそうにしてるし」


「え? 月乃をいじめてる時はいつも楽しいけど」


「そ、そういう事じゃなくて! なんだか寂しそうっていうかなんていうか」


「どうして…… どうして私に意地悪ばかりするの? そんなに私の事が嫌いなの?」


「いや、好きだよ? 月乃こそ俺の事好きじゃないだろ?」


「…… だって藤原君は私を脅して」


「だったら俺が告白した時断ったのは?

俺だけの月乃になってくれないだろ? てか月乃はもう俺のものだろ? 好きとか嫌いとか云々じゃなくて」


途中から藤原君の言っている事がわけがわからなくなってしまった。 一体何を考えてるの?


「じゃあさ、俺が月乃の証拠写真を一切捨てたらどうする? それでも俺の命令を聞くか?」


「だって命令とかって…… そうやって人を従わせても好きになってもらえ……」


「うるさい」


途端に藤原君の顔が怖くなった。 え? なんで!?

藤原君に腕を引っ張られ引き寄せられたかと思ったら肩を押されてそのまま私は後ろに転んでしまった。


外の隅っこの方だったから誰も見てる人はいなかったが見てる人がいても藤原君はやっただろうというくらい怖い顔になっていた。


尻餅をついたまま藤原君を見上げていた。 こ、怖い。 なんでこんなに怒ったんだろう?


ジワリと汗が噴き出る。


「ふ、藤原君? ごめんなさい」


藤原君は一瞬後ろを向きそして向き直すともういつものつまらなそうな顔に戻っていた。


「ほら、立てよ」


手は貸さず私にそう言ってきた。 なんて冷たいんだろう……


「あ、あのジュース買ってきていい?」


「は? 逃げるの?」


「逃げないよ、逃げたらどうなるかわからないし……」


「じゃあ買ってこいよ」


そう言われ私は自販機に向かった。 マズい事言ったのかもしれない……

とりあえず冷たい物でも飲んで頭を冷やそう。


「ごめん、お待たせ」


「あ? 俺の分まで買ってきたの? 相変わらずそういうとこは出来た奴だな」


「え? どういうとこ?」


「月乃はそういう風に育てられたんだなって事だよ」


「あの…… 藤原君は違うの?」


「違うね」


「あ…… そうなんだ」


「だから大好きな月乃にも味あわせてあげるよ、共有しようじゃないか」


「私が藤原君と何を共有するの?」


「俺の虚しさや苦しみや孤独感?」


「好きだったらどうしてそんな事ばかり共有しなきゃいけないの? 楽しい事とかは?!」


「だったら月乃は心から俺を好きになれよ、命令だ」


「可哀想……」


「は?」


気付いたら私は泣いていた、好きになったとかそんなんじゃない。藤原君の事がなぜか可哀想だと思ったからだ。


なんでこんな奴に酷い事しかされていないのに涙を流すのか自分でもわからなかった。


「シラけた、もういいわ、帰る」


そう言い水族館から出てその日は帰った。結局私はよくわからないまままた藤原君に振り回されただけであった。





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