プロローグ
「ご主人様、今日は如何なさいましょうか?」
出来るだけこいつの機嫌を損ねないように私は誰もいなくなった教室で恐る恐る聞いた。
「土下座しろ、しっかり床に額を擦り付けるんだぞ?」
なんだ、その程度か。 もう私にとってはこんなことなんの造作もない。
「畏まりました」
私はもうその慣れた行いを一体こいつにどれほどしてきたろう?
仮にも私はこの学年で1番可愛いと言われているのにこいつの奴隷となっている。
「今日も土下座姿が様になっているな」
そしてこいつはいつものように額を床に付けている私の頭の上に自分の足を乗せる。
こいつはこんな事をして一体どんな顔をしているんだろう?
優越感に浸ってる? 私を言いなりにして。
大してカッコ良くもないこんな奴にいいようにされるなんて屈辱以外の何者でもない。
「おい、誰が頭を上げていいって言った?」
「申し訳ありません」
つい反抗心で頭を上がるところだった。
もうやり慣れてるとはいえ悔しい事は悔しい。
そして私の頭から足が離れた。もう顔を上げてもいいぞという事だ。
「こっちに寄れ」
「はい」
そして私を側に引き寄せ私の頸の辺りにこいつは鼻を持っていき私の匂いを嗅いだ。
こいつの鼻息が首にあたりゾワゾワと寒気がしてきた。
ペロン。 首筋に生暖かい感触とその直後フッと息を吹きかけられヒヤッとした。
首筋を舐められた。 私はビクッとして舐められた場所を手で触る。
汚らしい。 好きでもないましてや嫌悪している男に首筋を舐められるなんてこんな気持ち悪い事はない。
「なんだ? その反抗的な顔は? 罰を与えられたいか?」
「誠に申し訳ありません、ご主人様のご行為に背くような真似をしてしまいました」
マズい、顔に出てしまった。 罰とは私の恥ずかしがる事に決まっている、どうにか機嫌を直してもらわなきゃ……
「ふん、だったら」
「あの! でしたら私がご主人様の首筋を舐めさせて下さい」
被せ気味に言った。 こんな奴の首筋なんか舐めたくない……
「いいだろう、じゃあやれ」
そしてこいつの首筋を舐める。
鼻筋からこいつの臭いが私の鼻孔を通り頭にツンと来る。
気持ち悪い…… こいつの味、 臭い、首筋の舌触り。 男はほのかに汗ばんでいた。全てが私の五感を支配する。
満足そうにこいつは私の背中を摩る。
「んっ!」
一瞬ビクッとしたが何が機嫌を損ねるかわからない。
私は舐め終わり首筋から舌を離す。
「しっかりと俺を堪能したか?」
「はい、とても甘味で上品なお味でした」
よくもまぁ私もペラペラとこんな事が言えるものだ。
こいつは満足したのか歪んだ笑みを私に向けていた。