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赤い死神の終の棲家  作者: 木の実あかし
閑話二.五章
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閑話5

※本日(7/30)投稿五話目です。全六回分あります。

 祝賀会はメアのこと以外は問題なく終わったわ。今は年越しの準備をしている。

 エスカーチャに居た時はみんな外でお祭り騒ぎだったけど、この近辺はただ家族と一緒に過ごすだけ。同じ大陸内でも違うらしい。


 家の中は普段通り。私は自分の部屋で墨を磨っているところよ。自分で作った丸い陶器製の硯はちょっと不格好だけど、気にしない。

 絵筆を加工して毛先を尖らせた筆を浸す。そして、薄い紙に言葉を書き連ねていく。


 墨が乾いたのを確認してからバスローブとタオルを持って下に降りるとフィロガは魔道具を分解してまた組み建て直しているところだった。


「あんた飽きないわね」

「その荷物は……水浴び?」

「そうよ。あんた、絶対覗くんじゃないわよ」

「そんなことしないよ」


 苦笑いの義兄は珈琲を飲んだ。

 そうは言っても、事故があるとも限らない。なんかの拍子に呼びに来たりとか、そういうことはあり得るじゃない。それは困るのよ。


 すぐ近くの川に転移してバスローブに着替えた。髪留めは外して濡れないように石の上に置く。そして『色移り』を解いた。協会の魔術は使いやすいようでいて、私には少し合わない。こういう時は逆に邪魔になってしまう。


 雪融け水が流れ込んできてとても冷たいけど、そのまま川の中に入った。

 腰ぐらい沈んだあたりで深呼吸をした。氷柱を四方に作り上げてそこそこ広めの禁足地を設定する。流れる水音が遠のいて一気に静かになった。空気が薄くなっている錯覚。禁足地内の大気魔力を排除して場を整えているからそう思うだけ。


 一歩前に進むと頭から沈んだ。それでも構わずに水底を歩く。息苦しくはない。見上げるとまるであの暗闇の中にいるみたい。ここは川の中であって川の中じゃない。


『禍罪を清め祓え』


 そう何度か唱えて川から上がる。大して効果はないだろうけど、やらないよりはいい。

 濡れたまま手だけ拭いて、書いてきた祝詞を唱えたらその紙を炎で燃やした。

 これで一区切り。禁足地を解いて協会魔術で体を乾かす。


 家に戻ると義兄は魔道具をいじったままうたた寝をしている。上からタオルケットを持ってきてフィロガに掛けたけど、よほど疲れているのか起きない。


 ――この人が居なくなったら、私はどうするのだろう。


 そんなことをふと思って、考えるのを止めた。先の事なんて、考えても仕方がないから。


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