プロローグ【サイドA】
あかしと申します。今後ともよろしくお願いいたします。
そろそろ、寒さが身に染みる季節だ。曇り空を見上げて、真っ赤に染まった外套を脱いだ。大好きな白はとても汚れやすくて、実用的ではない。だけれども、好きなのだから、仕方がない。
でも、黒も嫌いじゃない。
地面に視線を下ろした。特に、錆を含んだ赤がツンとした臭いを帯びて徐々に変色していく過程はすごく綺麗。いつまでも見ていられる。
命の灯し火が消えた男は、土塊を掴んでいた。私に投げつけたかったのか。答えは知らない。透明な体になって恨みがましい目付きだけれども、すぐに消える。彼らは人間の残滓。直にキドナが彼を吸い尽す。それで、おしまい。
私は倒れている方の体に落ち葉をかぶせた。二度と目覚めないのだから、せめての手向けに。そのまま冬を迎えたら寒いだろうから。
そんな静けさを破る音がした。枯葉を踏みしめる音。異物がこの美しい空間に侵入した音。
無粋。せっかく綺麗なものしかなかったのに、汚されたような気分。私はその侵入者を確かめようと思って、振り向いた。
――そして、私はその時に、直感したの。
彼は、私が出会ってはならない存在だった。だって、私の中で、大切なものが書き換わってしまったのだから。
※2021.7月に横書き用&細かな描写の修正として差し替えを行いました。




