●5●750人を殺した魔術師
昼休みが始まった。すぐさま俺は詩菜のところへ向かった。
「授業中考えた。そして決めた。俺は魔術、魔法を受け入れる。だからみんなの記憶から20人もの人が消えた原因を教えてくれ。」
「優太と城崎、なんの話をしてるんだ?」
突然、啓介が入ってきた。丁度いい、聞きたい事があったんだ。うちのクラスで殺された人物・・・。
「啓介、深川百合子って知ってるか?うちのクラスの。」
「ん?深川なんていたか?名簿にものってなかったろ。」
やっぱり・・・みんなの記憶からというより、この世に存在していなかったことになっているのか?
「詩菜、こいつには全て話してやったらどうだ?俺の親友だ。広めないとしんじてる。」
「でも・・・わかった。不知火君、頭をかして。」
「すまん、後でもいいか?ちょっと今から行く所が。」
「ああ、そうだったのか。じゃあな。」
啓介は走って行ってしまった。なら、話の続きをするか。場所を変えて・・・。
「それで、まずは20人殺されたことだな・・・。」
「まず分かるのはこの殺人を行なったのはこの学校の人物。」
「それはなんとなく俺もわかっていた。気になるのは、朝言っていた記憶封印魔法との関係だ。つまり魔術師が殺したということなのか?」
「その可能性はかなり低いかも。もう一つの可能性、いや、多分これが正解だと思うけど・・・。」
「なんなんだ?」
「ただの人間にも魔術師になる方法が二つあるの。一つ目は魔術師との契約。これは今回の事とは関係ない。二つ目は人間を・・・。」
「人間を、どうするんだ?」
「750人を刺殺する事。750人を殺せば、死神が力をくれる。」
「まさか・・・でもうちで殺されたのは20人だろ?それにただの人間に750人も殺せるわけが・・・。」
「750人殺せば、殺された人物の存在が消え、みんなの記憶からも消える。魔術師を除いて。」
「つまりこれ以外可能性は無いと・・・。死神の力を得るとどうなるんだ?」
「私が全然使えない状態異常を相手につける魔法、相手の魔力や体力を吸収する魔法。そんなものが使えるようになる。」
「かなりヤバそうなものでも無いな。死神の力って聞いたからもっと即死魔法とかあるかと思ったけど。」
「確かに、そこまで強く無い。でも何もできない人間にとっては正直、これだけの能力で十分だね。」
魔術師にとったら、死神の力なんて自分たちの力と然程変わらないってことなんだろうな・・・。でも何もできない俺たち人間にとったら、死んでもおかしく無いってことか。くそっ、『何が俺にできることならなんでも協力する』だ。なにもできないじゃねぇか。結局足手まといになるだけだ・・・。
「そういうことだから。優太は危険だから首は突っ込まない方がいいかも。殺されて欲しく無いし。」
「そうだ、な。でも詩菜、殺されて欲しく無いと思っているのは俺も同じだ。無茶はするなよ。」
「ありがとう、優太。本当はもう、魔法なんて使いたくなかったんだけど。」
詩菜の目から涙がこぼれたように見えた。手伝ってやれないことが辛い。
「今から夜に備えて早退するから先生に伝えておいてね。」
「あぁ。わかった。」
「優太。」
「どうした?」
「大好きだよ・・・。再会できてよかった・・・。」
「・・・えっ、今なって言っ・・・」
詩菜はもういなかった。もしかするともう、会えなくなるかもしれない。頼む、無事でいてくれ・・・。