●4●封印された記憶の解除
修学旅行が終わった後の事だった。ある日、詩菜の様子が変になった。
「詩菜、おはよう。」
俺はいつも通り詩菜に挨拶した。いつもだったら返してくれる詩菜だが、今日はしてくれなかった。それどころか、初めて本気で怒っているような顔を見せた。
「優太・・・ちょっときて。時間がないからはやく。」
詩菜は俺を、生徒があまり立ち入らない場所に連れてきた。
「優太、何やってるの・・・。昨日私でなんとかするから学校を休んでって言ったのに!」
どういうことだ?昨日そんな話をした覚えがない。
「そんな話してないぞ?突然どうしたんだよ・・・。」
「どうしたもなにもっ・・・、え、忘れたの・・・?」
「忘れたとかじゃなくて、多分言ってないかと思うけど。」
詩菜は言葉を詰まらせた。そして少し落ち着いた様子でこう言った。
「優太だけは・・・巻き込みたくない。だから、今の会話は無かったことに。」
・・・巻き込みたくない?
「巻き込みたくないってどういうことだ、何かあったのか?」
「・・・私、一つ優太に大事なことを隠しているの。それを知ったら、後戻りできなくなる。」
「俺にできることならなんでも協力する。だから、教えてくれ。」
「・・・わかった。目を瞑って。」
俺は言われるまま目を瞑った。すると、詩菜は手を俺の額にあてた。そして何かボソボソと呟いた。・・・!!!一瞬、頭痛がした。
「ごめん、我慢して、もう直ぐ終わるから。」
頭痛が治まると、妙な感覚がした。・・・あれ、そうだ。確か昨日、詩菜は俺に学校に来るなと言っていた。何故だったか・・・。
「・・・はっ、思い出したっ!!!」
何故こんなことを忘れていたんだ?昨日、詩菜は俺に向かって学校を休めと言っていた。それは何故かって?
うちの学校の生徒が、20人も殺されたからじゃないか!!!!!
「記憶を封印されたようね。関係者の全員の記憶を封印するなんて、ただものじゃない。・・・いや、まさか、750人殺し終わったんだとしたら!!!」
「詩菜っ!!!どうなってるんだこれは!何故俺は昨日の出来事を忘れていたんだ?」
「記憶封印魔法を食らったの。その封印を、私が解いたの。」
「記憶封印魔法だって?魔法?そんなものがあってたま・・る・・・かっ。え、詩菜が、封印を解いた?」
「ごめん、これが私が隠していたこと。私は・・・魔術師なの。信じてもらえないよね。でも絶対に誰にも言わないで。」
その時、予鈴のチャイムが鳴った。そろそろ教室に戻らないといけない。
「取り敢えず、昼休みもう一度話そう。昨日の殺人のことも、魔法のことも。」