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異世界転生 ~少年の転生譚~  作者: 夕日
1章 
8/60

7話 黒焔

 俺は今の状況を何とかしようと考えを巡らせる。




 まずは俺にくっついている姉上に離れてもらわないとな……



「姉上、離れてもらってもいいですか?」



 俺がそう言った直後、リファは抱き締める力を強くすると共に怖いのか、震えた声で声をかけてきた。

 


「……ユウは弱いんだからじっとしてなきゃ駄目だよ……巻き込まれちゃうよ……」



 弱々しい視線でリファは俺を射貫く。

 恐怖のような感情で表情はすっかり染まってしまっていた。



 あ、これ離れてくれないパターンじゃね?

 ……はぁ……嫌われるが、しゃべり方を素に戻せば驚いて抱き締める力も緩くなるだろ……



「姉上……いや、リファ。俺からさっさと離れろ。」



 俺の一人称は今まで僕だったのだが、敢えて俺へと急に変えた事に加えて少し粗くなった口調にリファは驚いて素っ頓狂な声を上げてしまう。


 

 予想外の出来事によってリファは俺を抱き締める力を緩めてしまう。

 その瞬間を俺は見逃さずにその隙を突いて彼女から離れ、魔人に向かって歩き出した。



「っ!? ゆ、ユウ様!! ここは危険です!! 早くお逃げください!!」



 俺を阻む物は姉上だけでは無かったらしく、向かう先にいた数人のメイドが驚愕しながらも俺の行動を慌てて止めようとする。



 おいおい、俺ってどんだけ弱者と思われてんだよ……あ、俺がそう思ってもらえる様に行動してたや。



「あ゛ー……退いてくれ。先へ進みたいんだ。」



 頭を掻きながら億劫そうな表情を浮かべた俺はメイドに向かってそう言うがメイド達は俺を行かせまいと必死の形相で何がなんでも逃がそうと試みる。



「なりませんッ!! ユウ様は戦う事が出来無いんですから、早くお逃げくださいッ!!」



 メイド達は魔人を警戒しながらも俺の言葉に一切耳を傾けずに逃げろと何度も注意をする。



 ………ダメだ。

 埒があかねぇ……はぁ……もう完全に少し前までの弟ポジには戻れんな……腹括ろうか。



「はぁ……さっさと退けって言ってんだろうがッ!! 邪魔だからどけッ!!」



 俺は怒声を上げながらメイド達を強引に押し退け、魔人がいる場所へと足を進めた。



 いつも穏やかで弱々しかった俺が怒りを露にして怒った事に騎士達も魔人を警戒しながらも何度も目を瞬かせ、驚いていた。



 俺は懐にいつも忍ばせていた短剣を左手で取り出し、騎士達よりも前へと歩を進めた後に魔人と相対した。

 騎士達も俺を慌てて止めようとするが、「黙れ!!」と一喝して黙らせた。



「……んぁ!? お前……見たところ、この騎士達の主ってとこか? 俺の前に出てきたって事は命乞いかぁ? お前みたいな貴族は何度も見てきた。自分以外を殺してもいいから自分を見逃せってな。くくっ、お前もそれだろ? 残念ながら俺は……んなッ!?」



 男の魔人が呑気に口を開いている間に俺は身体を強化する無属性魔法を無詠唱で使用した。その結果、身体能力が高まる事となった。

 そして魔法を使った直後、大地を蹴って猛然と加速し、一瞬で距離を詰めて男魔人の首を狙って短剣を振るう。



 だが、男魔人は俺の攻撃に気づき、のけ反って紙一重で避けた。本当に紙一重だったのだろう、先程の攻撃で男魔人の髪である紫色の髪が数本宙に舞う事となった。

 俺は初撃を避けられたと分かると同時に後ろへと飛び退き、10m程距離を取って向き直る。



(おいおい、あの魔人えらい強くね!? 初撃避けられるとかもう俺死んだんじゃね!?)



 内心ではそう思いながらも俺はポーカーフェイスを崩さない。



「おっかない挨拶だなぁ!? おい、お前ら!! こいつは俺の獲物だ。手出すんじゃねぇぞ!! ……それにしても……餓鬼、お前人間か? 人間の餓鬼はこんなに上手く身体強化使って短剣振るえるはずが無いんだが……ま、魔族が姿を偽装してんなら流れる血の色で分かるから良いんだけどよ……」



 値踏みをするかのように俺を舐め回すように視線を這わせる。



「んぁ!? 俺は正真正銘、10歳の人間だ!! この小さな体じゃ、長期戦は無理なんでな。さっさと死んでもらうぞ魔人。そんなわけで初めから本気でいかせてもらう」



俺はそう言って、ふぅ、と呼吸を整える。



「『―――咎人の炎は絶望と狂気を孕む』」



 不敵に笑いながらも俺は流麗に言葉を紡ぎ始めた。



「『纏えよ、纏え、死の炎。

嘗て咎人と呼ばれた、心優しき英雄ッ!! 謂れのない罪にて、万の鎖に捕らわれ、炎を残し、命を散らしたッ!! 炎は、英雄の怨念を宿し、絶望を嘆き、その果てに、色を黒へと変貌させ、全てを燃やし、暴虐の限りを尽くしたッ!! さあ、もう一度、人の子の前に、現れろ!! ――《黒焔》!!』」



 俺が詠唱を終えた瞬間、全身が黒の炎に包まれる。



「あ゛ー……やっぱこの魔法辛いな……まぁいいや……さ、死合おうか」



 俺は小さく笑いながら、魔人に向かって言葉を発した。

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