5話 お出掛け
あれから1週間が経った。
俺はフェレナさんと姉上であるリファの3人で一緒に近くの森へ行く事となった。
名目上は3人、となってはいるが貴族だからかどうしても護衛役の騎士や世話役のメイドが同行する事となってしまう。
そして目的地である森の中には綺麗な湖があるらしい。
なので、そこでお茶でもしませんか? というのがフェレナさんの提案だ。
勿論、俺は二つ返事でOKした。
ちなみに次男のクルトは昔、俺よりも優位と見せつけたかったのか俺が自分の近くにいる時を見計らって家に仕えている騎士達に「俺はこんな貧弱な奴とは違う!! 誇り高きヴェロニア伯爵家の次男としてちゃんと剣を使える様になりたい!!」と高々に宣言していた。
その場で騎士達はクルトの言葉で感動して泣いていたが、その言葉あってかクルトを毎日のようにかなりしごいていたりする。
つい先日、クルトは訓練で怪我をして泣きそうになっていた。
俺はそんな実の兄の姿を遠目から見ていたが掛ける言葉が見つからなかったよクルト君。ざまあねぇな。
対して俺は美人な姉とフェレナさんを交えての楽しい楽しいピクニック。
勝ち組の俺とは違い、クルトはむさ苦しい男との訓練にたぶん励んでいる。
いやぁ、守ってあげたくなる系弟ポジ様様だな。
ボロ出さないように気を付けなくちゃ。
「ユウ君、久しぶりね。少し大きくなったかしら……私よりも大きくなるのも時間の問題ね、ふふっ」
「そうですか? 僕は大きくなってもならなくてもどちらでもいいんですけどね……」
そう言って華やかに笑いながら俺の頭をフェレナさんは優しく撫でた。
俺は今140cmにまで背が伸びていた。
対してフェレナさんは、150cmと少しなので確かに後数年もすれば確実に俺の方が大きくなるのだ。
くぅぅぅ、頭なでなでも後数年とは……悲しいッ!!
フェレナさんは15歳にしては膨らむところが膨らんでおり、そして艶やかな長い銀髪の持ち主だ。俺の歳が幼すぎる為か、15歳の癖にかなり色気があるように思えてしまう。もし姉上がいなかったら襲っていたかもしれん……ま、あくまでも可能性だが。
「ユウは男の子なんだから、ちゃんと大きくなって大切な女の子を護らなくちゃ駄目なのよ?」
諭すように俺の発言をリファは優しく咎めた。
姉上の声、いつ聞いても癒される…
「僕は大きくなったら大切な女の子を護るの? なら、姉上とフェレナさんを護るよ!! 姉上とフェレナさんは僕のとっても大切な女の子だもん!!」
そう言いながら俺は無邪気な笑顔で返答する。
その表情の裏は打算にまみれてしまっているが。
ええ、ええ、勿論護りますとも。
言い寄る害虫駆除ならいくらでも殺りますよ?
「ユウ君が護ってくれるの? ……じゃあ、いつかお願いね?」
「ユウがお姉ちゃんを護ってくれるの? ……うーん、今は想像も出来ないなぁ……」
俺の言葉を聞いたリファとフェレナは二人で顔を見合わせた後、そう言ってフェレナは子供の可愛い冗談を聞く大人の様に軽く流し、リファは俺の顔を見て険しい顔をさせながら首を傾げていた。
フェレナさん、俺は本気デスヨ? 美人な幼なじみのお姉さんに付く害虫駆除ならいくらでも承ります。
そんな会話をしているといつの間にか目的の場所に到着していた。
護衛役の騎士達は相変わらず俺をあまり良く思っていないのか、険しい表情や嫌そうな顔を数名程していた。
対してメイドさん達は笑いながら俺達を仲の良い姉弟を見るかのように眺めていた。
野郎に好かれても良い事はないからな!!
この状態でいいんだよ、これで。
到着した後、昼食をフェレナさんや姉上に目一杯甘えながらも世間話に花咲かせていた。
が、ご飯を食べ終わる前に安全確保の為に見回っていた騎士の一人が慌ててこちらに大声を上げながら戻ってきた。
「まっ、魔人だ!! 魔人が3人もいたッ!! 早くここから逃げろぉぉおおぉぉぉ!!」
……ふぇっ!? 魔人って………マジ!?